我々エレヒス派の栄光ある勝利への道は、今まさに新たな段階に入った。
【逆転】
最初から明らかなことではあったけど、やはりエレンはジークを利用していただけであった、と。
ジークにも疑われてはいたようだが、その疑いが一層深まったのは、やはり前回ジークが叫ぼうした際、咄嗟にそれを制止してしまったことが大きいのだろう。
冷酷に振る舞ってはいても、エレンの情の深さが思わず顔を出したことが仇となった。
ま、仮にジークが心からエレンを信じていたとしても、エレンが『座標』に来るまでに長い時間がかかったのならば、やはりジークは始祖の使用権を得ようと試みるだろうから、いずれにせよ結果は同じだったかもしれないが。
ジークが始祖の力を持った時は「そんなのアリかよ!」と思ったものだけど、最後には早くもエレンが主導権を握っていて笑ってしまった。
【真意】
作中でも既にアルミンによって語られてはいたけど、ここでとうとうエレン本人の口からジークの計画に協力していた訳では無いことが明かされる、と。
とはいえ、ジークを騙すだけならアルミン達に憎まれるような振る舞いをする必要はないから、以前から書いているように、エレンは「虐殺を行った悪のエルディア人勢力」として、国際社会やエルディア王国に裁かれるつもりなのだろう。
【洗脳】
父、グリシャによる洗脳を強調するジークだけど、彼の回想から明らかなように、実のところジークは全然グリシャに洗脳されてはいないんだよね(そもそも家庭教育を洗脳とは言わないと思うけど)。
洗脳と言うのであればむしろ、クサヴァーさんこそがジークを洗脳してしまったと言えるだろう。
何となれば、少年期のジークは、父親に可愛がられていないという感情はあっても、憎しみなんてものは全く抱いていなかったからだ。
ジークに父親に対する憎悪を植え付けたのは、他でもないクサヴァーさんである。
彼はいかにジークが父親から愛されていなかったかを強調し、本来彼の心には存在しなかった(あるいは小さなものだった)グリシャへの強い敵意を目覚めさせた。
無論、これは一つには父母を密告したジークの罪悪感を軽減し、その行為の正当化を図ることで彼の心を守るのが目的だったのだろう。
しかしながら、ジークに対して亡き我が子を重ねていたクサヴァーさんが、果たして全く私心を持たずに「前の父」であるグリシャを貶めていたとは、私には到底思えない。
いずれにしても、クサヴァーさんによってグリシャへの憎悪を煽られた事が、ジークがエルディア人の安楽死などという狂った計画を思い立った原因であるのは間違いない。
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【ヒストリア】
はい来ました。来ましたよ、これ。
一体なぜヒストリアはエレンの前で涙を浮かべたのか?
エレンが「ゼロ・レクイエム」ならぬ「イェーガー・レクイエム」を行おうとしている事を予想している私にはすぐにピンと来た。
これはヒストリアがエレンから計画を聞かされた時、ないし、エレンとの今生の別れの場面なのである。
ヒストリアが身籠っているのがエレンの赤ちゃんであるという説に対して、たまにこういう反論を見かけることがある。
「ヒストリアがエレンと想い合って結ばれたのなら、なぜ現在の彼女はあれほど暗い顔をしているのか?」
この問いの後には、「これほど暗い顔をしているのは、好きでもない男と子供を作ったからに違いない」と続く訳だが、愛し合う男との子を持ったからといって、幸福であるとは限らないのだ。
そう。彼女はエレンが死のうとしていることを知っているのだ。
それも、ただの死ではない。「虐殺を行った大悪人」としての罪を一身に背負い、国際社会だけではなく、同胞であるエルディア王国からも否定されての泥に塗れた死だ。
そして、彼を断罪するのは他でもない。
エルディア王国女王であるヒストリアなのである。
お分かりだろう。
彼女は自身の手で最も愛する者の死に、虐殺という最悪の罪を負わせて貶めねばならない。
それだけではなく、お腹の子供に本当の父親の名を明かすことすら未来永劫叶わない。
だからこそ彼女は涙を流した。
これ以外にエルディア王国の人々を救いつつ、国際社会とユミルの民とを繋ぐ方法は無いと解ってはいても、それでもヒストリアにとっては本当は到底受け入れ難い選択だったに違いない。
このままエレンとヒストリアは涙のまま死に別れてしまうのか。
それとも、改心したジークや、アルミンら仲間達が全てを背負って逝こうとしているエレンを救ってくれるのか。
佳境に入った物語から今後も目が離せない。