カギ爪の男と同じ匂いがする。
※以下、ネタバレ注意
炭治郎が受けた鬼殺隊の最終選別には二十人程の子供達が参加し、僅か五名を残して鬼に食われた。
彼らは育手に拾われ、幼くして鬼殺隊への入隊を志すような人間である。幸福とは言い難い境遇にあった子達が多かったことだろう。
そんな哀れな約15名の子供達が鬼に惨殺されたことを知ったときのお館様の反応がこちら。
いや、鬼かアンタ!
言うにことかいて自分のせいで多くの子供達を死に追いやった直後の言葉がそれかい!
完全に、子供達を駒としか見なしていない男の発言である。
そもそも最終選別の内容自体が異常だ。
片手で足りる程しか生き残れないと知りながら、鬼を閉じ込めた山に子供達を送り込む試験など頭がおかしいとしか思えない。
しかも、入隊志望者には(ひょっとすると育手にも?)山に閉じ込める鬼は人間を二、三人しか食っていないという正確でない情報を伝えている。
子供達は生き残れる可能性は限りなく低いという覚悟すら持てずに、最終選別へ向かうことになる。
人道的にはもちろん、最終選別までに育手が払った時間や労力すら軽視している、極めて非合理的なシステムだ。
おそらく、お館様には人材育成という発想が無いのであろう。
そして、最低でも最終選別に生き残れるような強さも無い者達は、お館様にとっては「子供たち」ではなく、鬼に食われようとも何の感慨も湧かない。
いや、最終選別に生き残り、鬼殺隊に入隊した者だってそうだ。
入隊した直後からいきなり単独での任務を言い渡され、何の支援もなく鬼と戦わされる。
鬼畜の所業と言わざるを得ない。
才能ある人間は何もせずとも勝手に生き残り、不要な弱い人間は死んでいく。
産屋敷 輝哉にとって、鬼殺隊の「子供たち」はそういう存在なのだろう。
この異常者とこのまま何事もなく協力し、鬼舞辻無惨を殺してハッピーエンドになるとは到底思えない。
鬼舞辻を倒した後か、それとも前か、どこかのタイミングで産屋敷と炭治郎達が対立する展開になるときが訪れるのではないか。
そのとき鬼殺隊は、お館様に従う者と反旗を翻すものとで二分され、柱達もお互いに殺し合うことになるかもしれない。
柱達は皆お館様に対して一定の敬意を表してはいるが、例えお館様がどんな思惑を抱いていたとしても最後まで付き従う程に心酔しているのは、果たして誰だろうか。