※以下、ネタバレ注意
ヴィトによると、結婚式会場の中でジャッジとモルガンズは会話を交わしている。
無論、会話の中身は不明ではあるが、多くの招待客がいる中でわざわざ話をするくらいなのだから、ジェルマ66と世界経済新聞社の関係は良好であると考えて良さそうだ。
モルガンズが言った「縁深い」という言葉も、悪い意味合いではないのだろう。
世界政府のプロパガンダのためとはいえ、ジェルマ66は世経の絵物語で悪役にされている。
にも関わらず、なぜ世経と良好な関係を維持できているだろうか。
それはおそらく、ジェルマ66は『海の戦士ソラ』を格好の広告媒体と見ているからだと思われる。
理由は不明ながら、一般社会にその存在を隠匿されているジェルマにとっては、絵物語の架空の組織扱いと言えども、世間の人々に認知されることは何よりも重要なはずだ。
裏社会と関係が深くない勢力が傭兵を探した場合、表の世界では全く無名の戦争屋と、「誰もが知る悪の軍団のモデル」とでは集客力が全く違うことは明らかである。
「手を変え品を変えソラを追い詰める」という『海の戦士ソラ』での描かれ方もジェルマにとってはプラスとなる。
架空のはずの組織が実在したとなれば、作中で登場した様々な兵器や策謀もまた同じではないかと、依頼主の期待は否応なく高まることだろう。
ジェルマ66にとっても、『海の戦士ソラ』は歓迎すべき絵物語。
そう考えると、ヴィンスモーク家の外見もまた、それと無関係ではない可能性も出てくる。
ワンピースのアニメで描かれた『海の戦士ソラ』の「ジェルマ66」は、現在のヴィンスモーク兄弟と同じカラーリングであった。
とはいえ、「ガキ共への洗脳教材」と言うからには、『海の戦士ソラ』が連載されていたのはヴィトが幼少期のころと考えられるため、現在のヴィンスモーク家がモデルとなっている可能性は極めて低い。
となれば、現在のヴィンスモーク家も『海の戦士ソラ』に登場する「ジェルマ66」も、過去に実在した先祖を真似ていると考えた方が自然だろう。
しかし、上述のような『海の戦士ソラ』に対するヴィンスモーク家の好意的な姿勢を考慮すると、もう一つ別の見方ができる。
すなわち、『海の戦士ソラ』の「ジェルマ66」のカラーリングは作品オリジナルの物であり、現在のヴィンスモーク家はその配色を真似ているという可能性だ。
いわば、一種のコスプレである。
ヴィンスモーク兄弟は血統因子の操作を無効化されたサンジ以外、服装だけでなく髪の色までも多種多様だ。
これがジャッジによる意図的な改造だとすれば、『海の戦士ソラ』のネームバリューを意識し、子供達を作中のキャラに合わせようとしたということも考えられる。
傭兵稼業で金を稼ぎ、「悪の軍団」と呼ばれようともヘラヘラと笑う。
「北の海の再征服」以外の全ての誇りを捨てているジャッジのこと、そこまで堕ちていたとしても何ら不思議ではない。