機動戦士ガンダムUC episode 4 「重力の井戸の底で」感想
見てきました。やや辛めの感想になりそうです。
【地球連邦】
外道すぎじゃね、と思っちゃいますね、やはり。
3話で「建国当初から政治犯や貧困層をコロニーに強制移住させていた」と聞いた時も、「時と共にだんだん腐っていったんじゃなくて最初から腐ってたのかよ」と思いましたが、今回のはなあ……。
街を1つ接収して虐殺用地にするとか、もはや腐っても文明国家のすることじゃないでしょう。
現場が暴走してそういうことが起きるなら分かりますが、政府としてそれを用意するというのはちょっと考えられないです。
これって、もはやティターンズと変わらない、むしろそれ以下ですよね。
では何でかつてエゥーゴに加わってティターンズを倒した人々は、連邦を変えようとはしなかったのか、という話になってしまいます。
「逆襲のシャア」までの連邦は、腐ってはいましたが、「政府上層部で言えば現在の日本も似たようなものかも」という程度でした。「無能」という腐敗描写だったんですね。
ところが、UCの連邦設定はもはや民主党政権ですら比べものになりません。
現在の中国共産党政府すら及ばないでしょう。北朝鮮レベルの腐れ外道ということになってしまいました。
こうなると、「逆襲のシャア」でのアムロの名台詞、「貴様ほど急ぎすぎてもなければ、人類に絶望もしちゃいない」。これも何だったんだよ、ということになってしまいます。
UCでの連邦の話を聞いた後では、「いやいや、もっと急げよ」としか思えなくなってしまいますよね。
続編として作るのならば、もっと過去の作品を尊重するような設定にしてほしかったです。
【持ち上げられるジオン】
では、製作者はなぜ連邦をここまで貶める設定を作ったのか。
これはおそらく、ジンネマン達ジオン勢力キャラを魅力的に描くためでしょう。
かつての連邦の腐敗度では、コロニー落としによる大量虐殺を繰り返すジオンは「イカレている」としか言いようがなかったですからね(だからこそ敵勢力として相応しかったわけですが)。
そして、ジンネマン達袖付きは、ネオジオンの残党ですから、公国・第一次ネオジオン・第二次ネオジオンと幾度もコロニー落としによる大量虐殺に関わってきたことになります。
そんなキャラに何とか正当性を与え、「人間味がある」と視聴者に見せる為、「相対的に」ジオンを少しでもまともに見せようと、代わりに連邦をクズに描写することにしたのでしょう。
これまでの宇宙世紀作品の主人公は(ポケ戦以外)連邦に所属し、ゆえにジオン兵士との討論はほぼ戦場で敵同士として行われました。
しかし、バナージはどうも第三勢力的な立ち位置で、必ずしも連邦として動き、袖付き全体と敵対するわけではなく、ジオン兵士とも深く交流する主人公のようです。
そうなれば、「敵ではないジオン兵」を描く為に、これまでに無いほどジオンの正当性を(相対的に)引き上げ、連邦を貶める必要があったのだと考えられます。
正直、止めてほしかったです。
【絶望の世紀】
しかし、あれですね。つくづく宇宙世紀は度し難い世界ですよね。
世界政府たる地球連邦は街を接収して「公衆便所」(原作ではそう表記されたそうです)とする野蛮国家で、それに対抗するジオンは大量虐殺を繰り返す狂気の集団。
世界全体がアフリカの某国みたいなもんですね。
ある意味では反グローバリズム作品? 国境を消してもろくなことにならないよ、という。
EUを筆頭とする現代の世界情勢への風刺と取れなくもありません(笑)
これがもし、UCが宇宙世紀の「先端」ならばまだ「きっとバナージ達の尽力で変わるなんだろうな」という希望が持てるのですが、残念ながらUCは歴史の空白を埋める作品なんですよね。
この後にはF91が待ち受けており、ガンダムUCでバナージやミネバ達が何をしようとも、連邦は腐ったままで何も変わらないという未来が決まっているわけです。
不毛。不毛と絶望の作品です。
最終的にバッドエンドで終わるのなら良いですが、「スタート時点からバッドエンドが決まっている」作品なので、中々キツいものがあります。
しかし、喫茶店のマスターによれば、連邦が出来る前はこんな宇宙世紀よりさらに酷かったのか……。
まさに世紀末?
あ、でも連邦政府が自分たちを正当化する為に行った捏造という可能性も……、いや、体験した祖父母から直接聞いたならそれはない?
【バナージ・リンクス】
とはいえ、episode3に比べれば面白かったと思います。
3話はダグザ隊司令やオットー艦長の描写が薄いせいで、キャラの性格が豹変したようにしか見えなかったんですよね。
特にダグザ中佐は一体バナージのどこに希望を見いだしたのかさっぱり伝わらなかったので、死亡シーンも「ああ、何か格好良く描こうとしてるな」程度の感想しか持てず、むしろ冷めてしまいました。
これはまあ、原作がシリーズ小説であるアニメの宿命でしょうけどね。銀英伝くらい尺をもらえれば別なんでしょうが。
しかし、そうは言っても伝わらないものは伝わらないのでどうしようもありません。
それに対して、4話はジンネマン達との交流を違和感なく描けていて、きちんと感情移入ができました。
ロニとの絡みはおそらくカットされているんだろうな、とは感じましたが、それも許容範囲内でしたね(NT会話の演出でちょっと笑ってしまいましたが)。
上記のような設定への不満を除けば、ジンネマン達は良いキャラをしていて、それなりに満足できました。
ロニはちょっとアレでしたが。虐殺行為についてジンネマンは「サイコミュの暴走か」と言っていましたが、彼女には特に暴走したところは見られず、自分の意志のように見えましたからね。
バナージは必死に救おうとしていましたが、「こんな奴を救う必要ないだろ」としか思えなかったです。
【ミネバ・ザビ】
この人は何がしたいのかよく解りません。
フロンタルを危険視しているようですが、現在のところフロンタルは非常にまとも人なので、ミネバに全く共感でできないです。
マーセナス家にも何を目的に行ったんでしょうね。
ロンドベルに拘束されていた時点では「ラプラスの鍵」であるユニコーンガンダムは連邦の手にあったわけで、連邦議会議員に談判に行っても無意味ではないでしょうか。
その状態で「戦争」が起きるとすれば、それは袖付きがユニコーン奪還に来た場合であり、ボールは袖付きにあったのでは。
マーセナス議員のところに行って、一体なにを頼むつもりだったんでしょう。本来彼女が警戒していたのはフロンタルがユニコーンを手にすることであって、連邦の手に鍵が渡った以上、「戦争を止める」為に議員と話すことなど無いと思うんですけどね。
【リディ・マーセナス】
こいつは酷い。
3話(2話だっけ?)の時点で「一体なぜこいつはミネバを連れて脱走したんだ……?」とは思っていましたが、まさかその理由が「惚れたから」だったとは(笑) MSパイロットとしての腕は確かのようですが、頭が残念ですね。
マーセナス家の子息として見られたくない、みたいなことを宣っていましたけど、そりゃこれだけバカだとボンボン扱いもされるでしょう。
ふられて馬を駆っていたのも笑えましたが、その後格好付けてたり、なぜかバナージを逆恨みしてたのも思わず苦笑が漏れました。
浪川さんはアル以外ろくなガンダムキャラをやれないなー(笑)
マーセナス家の秘密とやらは今後語られる事項なのか、カットされてしまったのか。
って公式サイト見ると初代首相の子孫だったのか。これは重要人物っぽいし、まだ隠されているだけなのかな。
【ロンドベル】
オットー艦長率いるネェル・アーガマは、ブライトさんの指揮下から外されているみたいですね。
CCAでのロンドベルはかなり独立性が高いようでしたが、権限が縮小されてしまったのかな。
ネェル・アーガマはマーサ・ビスト・カーバインの意向を受けた連邦上層部の命令に従っているようですが、なぜマーサはわざわざロンドベルを使ったんでしょう。
ローナン・マーセナス議員がブライトさんに頼んだように、他に比べて自由が効くから、とかでしょうかね。
そういえば、アルベルトってビスト財団やマーサとどういう関係なんでしょうか。カーディアスとも知り合いのようでしたが。
なぜカーディアスにトドメを刺さなかったんだろう。1話の時点ではキャラが分からなかったので何か狙いがあったのかと思いましたが、2話以降のキャラを見るにただ怖じ気づいて逃げただけ?
自分を助けてくれた12号を哀れんでいたようですし、マーサがネェル・アーガマクルーを始末しようと言った時にも反論しようとしていましたから、根は悪い人間ではなさそうです。
改心してマーサに反旗を翻す展開になりそうです。
【ジオン残党】
こんなに地上に残っていたんだ。
逆に言えば、連邦がそれだけ国土の統治能力を失っているということでもあります。
しかし、1stのジオンMSが現代の画で出てくるのはやはり無理がありましたね。
まあ1年戦争時代の機体で連邦の機体を倒していたのはすごいですけど。そんなに性能変わらないのか?
16年も地球に潜伏していたのかあ。たしかハマーン率いるネオジオンはかなり地球まで進出していたような。その時にも合流できなかったのかな。
ロニが大暴れするのを見てブライトさんが「シャアの後裔を自称する者とは思えんな(?)」みたいなことを言っていましたが、シャアだってコロニー落としで虐殺行ってますよね。まさにシャアの後継に相応しい気がするんですけど。
ブライトさんはシャアを過大評価してる気がする。まあシャアとの付き合いはエゥーゴ時代でアムロよりも長いので、贔屓目が出てるんでしょうかね。
【その他考察】
袖付きの目的はラプラスの箱を入手して連邦へのカードとすることでしょうが、ビスト財団の目的が分からないですね。なぜあんなにうろうろさせないといけないんでしょう。
F91などでUCでは連邦は変わらないことは分かっていますから、これはもしやビスト財団(サイアム・ビスト)は実はとんでもないことを企んでいて、バナージがそれを打破する展開になるのかな。その場合「カーディアスとはなんだったのか……」になりますが。
フロンタルともマーサとも戦うことになるでしょうし、もしここにビスト財団が加わるとすれば敵勢力がかなり多いですね。
個人的にはバナージもミネバもフロンタルに協力すべきだと思いますけど。今のところフロンタルはガンダムの敵にしては破格にまともな人でしょう。
特にミネバは何で敵対してるのかホント分からない。
そういえば、フロンタルは「時は流れ始めた。カーディアス・ビストの手によって」と言い、ジンネマン達も「カーディアス・ビストはコロニー落としの被害地を見せて云々」と言ってましたが、彼らは裏にサイアム・ビストがいることは知らないのかな。
というかサイアムはどこにいるんでしょうね。
居場所を連邦やマーサが知っていれば、襲撃・拉致されて筺の場所について尋問されるでしょうから、隠れているのかな。
それと、最後に出てきた黒いユニコーンは、何かやたらダサく見えました。
間接部とかが金色なのが変です。
【主題歌】
今回は1話の次に良かった気がします。
PVで聴いた時はそうでもなかったんですが、エンドロールで聴くと良かったです。
逆に3話はPVで聴くと良曲に聞こえたのに、エンドロールで流れるとそうでもありませんでした。
UCって主題歌に恵まれませんね。映像をつければまた変わりそうですし、せっかくなんだからエンドロールに映像をつければ良いのに。