最初から飛ばしてきおる。
【魔王サタナキア】
いやはや、いきなりの裏切りにあいましたね。
生体金庫トラップを考案した王族魔王きっての切れ者。
管理者リョースやアスタロト陛下から何を考えているか解らぬ男と警戒される得体の知れなさ。
ピュアと<>との最終決戦でもその存在を匂わされ、一部では全ての黒幕ではないかとすら噂されてきたあのサタナキア陛下の、満を持しての登場が!!
……まさか冷汗流して狼狽しながらのものになるとは。
中々に衝撃的である。
帝王のことを裏切っている可能性も考えていたのだけれど、実際には他の悪魔と同じく主に忠実に仕える僕だったようで。
となると、サタナキア陛下を筆頭に、全ての六王達は帝王が「丁度いい塩梅」の存在級位を維持して魔界に君臨できる方法を、今も全力で探し続けていると見て良さそう。
【帝王】
これもまさかだったなあ。
てっきり、ソロモンと同様に思いつく限りの娯楽をやり尽くし、全てに飽きて放棄したのかと思ってたよ。
原典に落ちる寸前の存在級位。
つまり、帝王はかつてソロモンが手にしていた、世界を思い通りに出来る程の力を持っていたということだよね。
ロックヘイムでは四大魔王ですら管理者リョースには敵わないと言われていたらしいけど、実際にはこの時の帝王はリョースくらい余裕で一捻りできたのだろうな(そんな事をすれば更なる存在級位の上昇を招いたろうけど)。
一体どうやってそんな力を得たんだろう。
真っ先に浮かぶのはやはり、ソロモンが開いたと言う<神>がモーゼに与えた箱の中身(ベールゼブブ陛下の推測では、そもそも箱など存在しなかったそうなので、別の何かかもしれない)を使った、ということだが。
ただ、ソロモンは快楽への欲求に溺れて存在級位の上昇を「やめられなくなった」だけで、帝王のように制御不能で自動的に存在級位が沸騰していったわけではなさそうなんだよな。
まあ、もっとも、これもピュアの推測でしかないから、実際にはソロモンも途中からは帝王と同じ状態に陥っていたのかもしれないけど。
【帝王と他の魔王の関係】
ふうむ、帝王直属の六魔王以外の王族魔王は、帝王の現状を知っているのだろうか。
例えば、メフィストフェレス陛下が帝王のことを口にするのも「イヤがっていた」というアドニスのこの台詞。
てっきり帝王を嫌っているからだと思っていたけれど、帝王のことを吹聴することで存在承認を高めてしまい、存在級位の沸騰に拍車を掛けるのを避ける為だった、とも解釈できる。
また、「帝王はやれることをやり尽くし、世界を放浪する以外に為す術が無くなった」というアスタロト陛下の言葉も、『存在級位沸騰を食い止める手段が世界の放浪以外に無くなった』という意味だったのかもしれない。
とはいえ、メフィストフェレス陛下達が帝王の状況を解決する為に尽力している様子は全くないんだよね。
「口に出すのもイヤ」というほど嫌悪している訳ではないとしても、存在級位沸騰を避けるくらいの配慮はするだけで、特に敬愛したりはしていない、という事になるかな。
あくまでも君主にとっての主は大主のみで、帝王に対して真に忠誠を誓っているのは直属の六魔王に連なる悪魔達だけなのだろう。
帝王が魔界にいたときには、現在のような議会制ではなく、絶対帝政だったのも理解できる。
3人の大主魔王に比べて、帝王の力が圧倒的だったからなのだろう。
四大神獣の中でこれだけの力の差がある例は、骸者やリョースなど他の四大神獣には見られなかった事例だよね(バハムート♀は改造強化によるものだし)。
【帝王とソロモン】
ただし、「直属の六魔王以外の王族魔王も帝王の置かれた状況を知っていた」とすると一つ疑問が生まれる。
ソロモンは原典からの帰還の手段として、ピュアという胎界主の存在級位を沸騰させ、その存在を乗っ取る事を模索していたわけだが、それは帝王ではいけなかったのだろうか?
わざわざピュアの存在級位を高める為に司神降臨などと気の長いことをしなくても、既に高い存在級位を持つ帝王を乗っ取れば……
というところまで書いてようやく気付いた。
そうか、メフィストフェレス陛下とベールゼブブ陛下の専有胎界での話だと、ソロモンは原典と繋がっている「たましいの扉」を出口として翻訳世界に帰還しようとしていたんだっけ。
いくら存在級位が高いとはいえ、帝王がたましいを持たぬ神獣である以上、原典からの出口としては使えなかったわけか。
【その他】
・この塔はアス(ソロモン)が拠点にしていたのと同じ場所か。
・今回の話は時系列的にはソロモンが原典に落ちた数千年前から、帰還を試みてロックヘイムで大惨事が発生する数百年前の間の出来事ね。
・「飽きた」のではなく、存在級位を抑える為に仕方なくドヴェルグ帝国を手放していたとは。
・管理者リョースのこの悪役顔イメージからすると、サタナキア陛下にとってもよっぽど手放すのは悔しかったんだろうな。
・魔王サタナキア陛下が君主の空いた君主の座を目指して騒いでたという話だったけど、今回の人物像を見る限り、そんなに野心的には見えないなあ。
・魔界で高い地位を持っていた方が、帝王帰還の為に役立つという考えだったのか、単に手下の夢魔達が騒いでいただけで本人には端からその気はなかったのか。
・ソロモン亡き(亡くなってない)今、当面は帝王を「丁度いい存在級位」に保ちながら再び魔界に君臨させる為に、六魔王が活動する話が描かれることになるんだろう。
『帝王の塔02』の感想はこちら。