バギーかあんた。
第974話『いざ、鬼ヶ島』の感想はこちら。
【扉絵】
なるほど、ベタな展開なのに予想してなかったな。
美容室にはファイアタンク海賊団の部下が失神させられていたので、あそこでシフォンが捕まったのは間違いない。
つまり、一度海軍に倒されたことでシフォンを見失ったゴッティは急いで港に行ったものの、そこに停泊していた軍艦にはシフォンではなくローラが収容されるところだった、ということなんだろう。
【錦えもん】
要するにこの人がオロチ様から「切れ者」と言われていたのも、持ち前の運の良さを発揮する機会があって過大評価されてたんだろうな。
確かに、「ハブに足が付け加えられたからトカゲになった」と錦えもんから語られた時は、「え? ちょっと無理があるような……」とチラっと思ったんだよね。
しかし、まあワノ国ではそういうもんなのだろう、と軽く流して受け入れてしまった。
カン十郎達も同様の感覚だったのだと考えられる。
「錦えもんが言うならそうなんだろう」で済ませてしまう立ち位置にいたということだ。
その辺り、少しバギーに近しいところがある。
【慢心】
なるほどね。
この場面は既に最後の武器を鈴後から白舞へと持ち込んだ後だったわけか。
「向こう岸」とは鈴後側を指していたようだ。
傳ジローの言う通り、これはまさにオロチ様の慢心が生んだ事態であろう。
敵の移動速度を読み違え、大橋を破壊するだけで安堵してしまった。
更にもう一つ、伊達港の船を破壊させた百獣海賊団の面々に、その意図を全く伝えていなかったのも大きな失敗だ。
家臣に信じられなくとも、権力があるのだから実際に動かしてしまえば良いと驕っていたが、敵の規模を伝えていなかったせいで、彼らは伊達港に少数の船しかないことを疑問にさえ思えなかった。
もし、光月派の規模をきちんと説明してさえいれば、この時点で敵が既に出航していることに気付けたはずである。
【連絡の遅れ】
それにしても、この事態は何が原因で発生したことなのだろう。
目的地が常影港に変更となったと錦えもんの口から語られたのは討ち入り5日前のこと。
しかし、オロチ様がその報告を手にしたのは討ち入り前日だ。
カン十郎からの報告が明らかに遅い。
周囲に錦えもん達がいてそのチャンスが無かったと見る事もできるが……私はここにカン十郎の葛藤が表れたとみている。
【黒炭カン十郎の演技】
彼は作為的にオロチ様への報告を遅らせたんじゃないかなあ。
それと言うのも、私はカン十郎が心の奥底では光月家に対して仲間意識を持っている、と考えているのである。
つまり、自分自身をも騙し、「『光月家家臣を演じてきたスパイ』」をこそ演じているわけだ。
まさに、WCI編でプリンちゃんが己を「醜い化け物」と規定し、自分は悪女なのだと自らの心にも嘘を吐き続けたように。
かつて、日和様がゾロと接触した時に、読者の中には「日和様にはまだ裏があるのではないか」という意見が多く見られた。
その際私は、「日和様が根っからの悪女とは考えられない。ならば、もし彼女に裏があるとすれば『自分を騙して悪女を演じてただけ』となるが、それだとプリンちゃんと丸被りヒロインになってしまう。だから今の日和様こそが素の姿だろう」と予想した。
そう、日和様ではなく、カン十郎こそがワノ国におけるプリンちゃんだったのである。
しのぶちゃんを殺しも傷つけもせず、拘束だけで済ませている辺りにも、彼の無自覚の葛藤が見受けられるだろう。
おトキ様の「9つの影」という予言を今後の見せ場で使う為にも、カン十郎には「『光月家臣を演じるスパイ』を演じる」ことを止め、本当の心のままに光月家の家臣として生きる、という感動展開が来るはずだ。
そうすることで、理不尽な迫害を受けた黒炭一族を一方的な悪役で終わらせずに済む。
「カン十郎の密告のせいでモコモ公国は崩壊したのに、仲間入りなどあるのか」と思われるかもしれないが、例えばロビンにしても、彼女がクロコダイルを唆したせいでアラバスタ王国は甚大な被害を受けたわけだからね。
黒炭カン十郎が「何かを演じる生き方しか出来なかった」事情を知った上で、本心では彼が光月家の家臣となりたかったと吐露すれば、モモの助もミンク族達も許す度量を持っているだろう。
【その他】
・そういや、ルフィは貰った鎧をあっさり脱いでるな。
・百獣海賊団の連中はあんまり最悪の世代の実力について知らないんだよね。
・傳ジローが敵の船を沈めなかったのは何故だろう。何かに利用しようとしてる?
・康イエ様の「遺体」を弔ったのはカン十郎なんだよね。
・ひょっとしてこれ、康イエ様はまだ生きてるかもしれないな。