よくよく考えたら、外の世界を全く知らないおでん公を碇にしがみつかせて「3日間」海を引き摺り回した白ひげよりも、自分に匹敵する強さと分かっている相手を「釜茹で1時間」で済ませるカイドウの方がよっぽど温情的な気がする。
ONE PIECE 第971話『釜茹での刑』の感想
【内通者はいない】
第970話の感想でも書いた通り、私はこれまでずっと内通者はいないと主張してきた。
とはいえ、第962話で語られていたカン十郎の過去。
これがずっと自分の中で引っ掛かっており、彼が内通者であるという疑惑を完全には否定しきれないでいた。
詳細を伏せている割にはわざわざ「迫害」という具体的な設定を用意している不自然さと、黒炭一族が辿った末路に重なることから、あるいはカン十郎もまた黒炭家の末裔なのではないかという考えが消えなかった。
しかしながら、今回の話で少なくとも赤鞘9人男の中に内通者は存在しないとようやく断定できそうだ。
オロチ様とカイドウは既に勝利を確信している。
この期に及んでまだ内通者が正体を偽り、一緒に処刑される振りをする必要など皆無だからだ。
むしろ、オロチ様とカイドウの趣味の悪さを考えれば、処刑の前にカン十郎が裏切り者だった事を明かして、おでん公を嘲笑うだろう。
それをしないということは、内通者など端から存在しないと考えるべきである。
【オロチ様の情報源】
では、オロチ様はいかなる方法で光月家の情報を得ているのかと言えば、第955話の感想で書いたように、現代の情報源は複合的なものだと思われる。
ただし、20年前に光月家の動きが把握されていた要因はおそらく一つで、これも第970話で書いた通り、雷ぞうの(所持している)ビブルカードのせいだろう。
・強制労働を拒否した男が家族もろとも処刑され、堪忍袋の緒が切れた家臣達が花の都を襲撃した時。
・約束を破られたおでん公と家臣団がカイドウ討伐に動いた時。
↑の2回はオロチ様に詳細に把握されていたにも関わらず、おでん公が帰国後単独で殴り込みをかけた時には、オロチ様も完全に想定外という様子で、呑気に芸者遊びをしていた。
おでん公が花の都に向かった際、アシュラ童子と傳ジローを除く家臣達は全員それを目撃している。
もし、彼らの中にスパイがいるのなら、即座にオロチ様の所に伝わっているはずだ。
だが、オロチ様は何も知らなかった。
この事からも、情報源は内通者ではないと考えられるだろう。
おでん公帰国の半年前に起きた討ち入りでは河松とイヌアラシ以外の家臣が、今回のカイドウ討伐には家臣全員がと、どちらも雷ぞうが九里から動いている。
その一方で、おでん公による花の都への襲撃時には、家臣は全員城と妻子を守るように厳命され、九里に留まった。
そう、「雷ぞうが九里から動いたかどうか」。
ビブルカードからその情報を読み取る事で、オロチ様は光月家家臣団の動向を常に監視していたのである。
【他人のビブルカード?】
こんなことを書いておいてなんだが、実はつい先日まで「ビブルカードの破片が引き寄せられるのはあくまでも親紙である」という設定をすっかり忘れていた(ただし、本人に引き寄せられないと断定できる描写は無い)。
ビブルカードの子紙が本人の方に引き寄せられるのではないとすれば、雷ぞうが所持しているのは、彼自身のビブルカードではないかもしれない。
いずれにせよ、雷ぞうは自分か、あるいは他の誰かのビブルカードの親紙を常に持ち歩いており、それを知ったオロチ様が雷ぞうの知らぬうちに子紙を入手しているという可能性が極めて濃厚だ。
ビブルカードの親紙を所持する理由は、離れ離れになる人の道標にする為である。
となると、例えば雷ぞうの知り合いにワノ国の外へと出て行った人物がおり、その者に手渡した自身のビブルカードの子紙を、何らかの経路でお庭番衆の者か黒炭ひぐらしが入手して隠し持っていた……といったことが考えられるかな。
まあしかし、自分が所持していたビブルカードのせいでモコモ公国は崩壊、おトキ様の負傷、更には間接的に主君おでん公を死に至らしめたとなると、雷ぞうが自害しかねないな……。
【意気投合】
オロチ様がワノ国を滅ぼしたがっていたのは妙に納得。
なるほど……国家運営の能力の欠如ではなく、敢えてあのような無茶苦茶な政策を採っていたのか。
下手すれば外敵になりかねないカイドウを引き入れたのも、もし万が一彼にワノ国が滅ぼされても、どうでも良いという思考故だったのね。
カイドウも退屈な世界を壊すような最高の戦争を引き起こすのが目的だから、その破壊衝動において彼とオロチ様は気が合ったのだろう。
あのメンヘラカイドウと一体どうやって仲良くやってるんだと思っていたのだが、なんの事は無い、カイドウもかなり性格が歪んでいて、オロチ様と同じくらい悪趣味だから気が合った訳か。
考えてみれば、ヤス家様の処刑で爆笑させられるえびす町の住人を見て、カイドウも嘲笑ってたしなあ。
おでん公の死後、約束通り一度は家臣達を逃がすも、「解放する……! 解放するが……その後も殺さないとは言ってない」という事で、すぐに追手を差し向け、おでん城も襲撃してくる訳なんだよね、オロチ様とカイドウは。
これがビッグマムだったら国外に出る条件で生かしてたろうな。
【オロチ様の人間性】
別記事にした。
【その他】
・そういや、一点疑問が。
・ゾウでイヌアラシ公爵は「カイドウはおでん様の持つラフテルの情報を狙っていた」と語ってたよね?
・全然狙ってなくね……? 何も訊く事無く殺そうとしてませんか?
・五年前はまだカイドウは全く髭を生やして無かったのね。
・御庭番衆、今でも現役の奴らがチラホラいるけど、20年前からあんまり見た目変わってないな。福ロクジュ以外は。
・今週のワノ国民を見てドレスローザ民の同類扱いしている人がいたが、賛同できない。
・そもそもドレスローザ民が(あそこは民のみならず王も同類だが)クズたる所以は、「たった今、ルフィの暴力で国を救われたばかりなのに、その直後には『戦うくらいなら滅んだ方が良い』と言い出す厚顔無恥っぷりと、成長の無さ」だからね。
・単に「騙されてた」レベルでドレスローザ民級を名乗るのは烏滸がましい。