おや? 何かご用ですか?
……ええ、確かに呪術廻戦考察界の最高権威であるネオ天草とは私の事ですが。
第89話の感想はこちら。
【偽物の正体】
まあ、何より0巻の時点で五条先生に殺されてるはずだからね。
特級呪霊と組んでいる呪詛師がいる事を察しておきながら夏油傑の存在を全く想起しなかった時点で、五条先生が彼を見逃した線は無くなったし、結構な数の読者が覚悟はしていたんじゃなかろうか。
んで、このニセ夏油の正体であるが、今のところ一番怪しいのはやはり呪術廻戦界の鬼舞辻無惨、御三家の汚点こと加茂憲倫かなあ。
九十九由基を疑っている人も多いようだけど、私が彼女より汚点を怪しんでいる理由としては、
1、九十九も崩れた口調になる時があるが、「キッショ」や「~じゃん」と使う感じではない。
2、九十九自身もレア中のレアの特級なのにそんな肉体をあっさり捨てるか?
3、(最初の肉体が九十九ではない場合)特級の肉体を短期間で2度も乗っ取る状況を作り、かつ、九十九由基という呪術界の超有名人の死を誰にも知られぬよう偽装できたというのはあまりにも都合が良すぎる。
4、人体実験という汚点の嗜好や、血液を操る加茂家の術式の傾向と、ニセ夏油の脳を使った術式が合致。
5、150年前から生きてる奴がチャラい言葉遣いというキャラのギャップは、いかにも芥見先生が好きそう。
6、灰原が「いい人」と評した九十九が、さすがにここまで他人を嘲笑いながら嬲るような言動をするのはどうなん。
7、イケメンが親友に対して激重感情を向けて偽物と見分けてる事に対して「キモっ」となるのは、どっちかというと男の感性な気がする。
こんな所かなー。
まあ私も九十九由基が過去編で出てきた時には疑ってたんだけどね(というかニセ夏油の正体ではないと考えているだけで、今も疑ってはいる)。
【上層部の内通者の正体】
夏油偽物説に対する反論として、「偽物にしてはこの夏油は五条悟に詳し過ぎる」という趣旨のものがよく見られた。
これは確かに尤もな意見だ。
現在の夏油が偽物と確定し、更に本物の夏油傑と記憶を共有していない事が明らかとなった今では、上記の反論は今度は呪術協会上層部に潜む内通者を炙り出すヒントとなる。
何となれば、ニセ夏油が五条悟と夏油傑に詳しくない以上、『五条悟と夏油傑をよく知る誰か』が彼に情報を流していることになるからだ。
そして、その人物はニセ夏油に内通している上層部の人間と考えるのが自然であろう。
『五条悟と夏油傑をよく知る上層部の人物』とは一体誰なのか?
読者の皆さんにはもうお解りのはずだ。
【ニセ夏油一味の目的】
↑の記事でも書いたことだが、
・宿儺の受肉直後からすぐに少年院で宿儺の実力を測る事を画策。
・特級呪霊を味方につけ、宿儺を味方に付けることを進言。
と、宿儺受肉後のニセ夏油の動きはあまりにも用意周到に過ぎる。
「偶発的に発生した宿儺の受肉を受けて急遽計画を練り上げて動き出した」とは到底考え難い。
更に言えば、ニセ夏油が宿儺の指をいくつも保有していた事も偶然と片付けるには無理がある。
つまり、宿儺の受肉そのものがニセ夏油の一味が画策した事態なのは間違いない。
宿儺を受肉させる為に指を収集している中で特級呪霊達が知能を持って活動しているのを発見し、彼らを駒として利用すべく接触。
そして、所持していた宿儺の指を「百葉箱に保管されていた」と内通者が記録改竄し、宿儺の受肉を実行したのだろう。
受肉がニセ夏油一派の企図した計画である以上、虎杖が宿儺の器たりえる事も事前に把握していた事になる。
五条悟や、一体化した宿儺自身ですら虎杖がなぜ宿儺を制御できるのか判っていないにも関わらず、ニセ夏油達はそれを確信していた。
何故か?
虎杖は最初からニセ夏油の一味によって用意された存在だと考えるしかあるまい。
彼は宿儺を受け入れる事を目的として作られた呪骸なのである。
さて、ニセ夏油が夏油傑の遺体を乗っ取った理由の一つに「呪霊操術」を挙げていたが、現在ではそれが彼らの計画に必須なのかは不明だ。
彼自身も語っていたように、五条悟を封印する為にも夏油傑の遺体は有用だから、呪霊操術はあくまでも、特級呪霊達を操れれば儲けもの……程度の副次的な理由かもしれない。
【なぜ五条を殺さなかったのか?】
表題の件について。
今回描かれた通り、獄門疆は本格封印の前に、対象の身体能力や呪力を封じることが明らかとなった。
つまり、その気になればニセ夏油はこの時点で五条を殺す事も出来たはずだ。
にも関わらず彼は、あくまでも五条悟を封印する事に拘っている。
これ、100年後、1000年後というのはブラフで、実際には比較的近いうちに解放するつもりなのではなかろうか。
ニセ夏油らの計画において五条悟の存在は不可欠、もしくは五条悟に情を抱いており、殺したくなかったのだが、ある段階では五条悟にいて貰っては困ることがある、と。
しかし、ニセ夏油らの一味が五条を必要としてる事が本人にバレるのも不都合な為、あたかも半永久的に封印するかのような嘘を聞かせたと考えれば全てに説明がつく。
この場合、五条が解放されるシナリオも当然考えているはずだ。
無論、「ニセ夏油らの一味が自発的に解放した」と五条悟本人にはバレないような形で。
宿儺の受肉といい、少年院の一件といい、彼らがその手の偶然を装ったシナリオ作りに長けているのは既に明らかだ。
五条先生も他の人間も、これらの出来事は偶然発生したものだと未だに思い込まされている。
用意されている台本として考えられるのはやはり、『虎杖の活躍によって無事に五条先生は獄門疆から解放された! もちろんこれはニセ夏油の一味にとっては大誤算!!』という形だろう。
自分達の操り人形である虎杖を主軸に据えれば、局面を思い通りに動かせるし、五条先生にとってもすんなりと受け入れ易い。
五条先生は未だに宿儺の受肉も少年院の一件も、その他の宿儺の指が絡んだ事件も、連続したものではなく、それぞれ個別の事案だと未だに思い込まされている。
封印から解放されたとしても、それが敵の計画通りだと気付くのは極めて困難だろう。
【ニセ夏油の言葉はどこまで本当なのか?】
そう考えると、そもそもの話として、ニセ夏油が今回語った言葉が全て真実とは限らない事に気付く。
考えてみればおかしな話だ。
特級呪霊たちはニセ夏油の事を「夏油」と呼んでおり、その事から彼が偽物だとは教えられていないと考えられる。
そんな特級呪霊らがいつ目を覚ますとも知れない中で、ペラペラと自身の正体と術式について語って聞かせているのだ。
術式の開示による強化が必要な場面でも無い。では、一体どんなメリットがある?
あるいは、ニセ夏油の説明した「脳を移植して肉体を乗っ取る術式」など存在しないのではないだろうか。
そう、当初私が予想していた通り、実際にはニセ夏油の正体は、夏油傑の遺体から作られた呪骸だとすれば、今回の不自然な解説ターンにも説明がつく。
もし五条悟に何も説明しないまま封印してしまえば、当然ながら彼は様々な憶測を立てることになる。
「あれは本物の傑の身体だ。だが、中身は偽物。だとすれば一体どんな可能性がある?」
小説版で書かれていたように、五条悟は死んだ赤ん坊そっくりの呪骸を目撃している。
「あれは傑の遺体から作られた呪骸なのでは?」という所にまで辿り着くのは間違いない。
続いて彼は自身にこう問うだろう。
「呪骸だとして、それを作れるのは一体誰だ?」、と。
ニセ夏油の術式開示は、目くらましとして極めて有効だ。
あんな風に外連味たっぷりの脳味噌を目の当たりにして、それが全くのブラフであるなどと発想を飛ばせる人間はそういない。
五条先生が「脳の移植による乗っ取り」以外の可能性を想定する事はこれで無くなった。
無意味に思われる「ネタバラシ」も、夜蛾学長によって綿密に計算された心理誘導だったのである。
「五条先生には六眼があるのだから、もし呪骸なら『核』を見抜けるのではないか?」と思われた読者もいるかもしれないが、術式の源であり、これ見よがしに口まで付いた異形の脳味噌すら五条は見抜けていない。
六眼をもってしても全てを見抜くことは不可能なのだ。
そして、交流戦でのパンダ先輩を思い出して欲しい。
彼は『核』が別の位置にあるかのようにメカ丸を誤認させ、のみならず実際には3つある核を1つだけであるかのように偽装した。
つまり、『核』の隠蔽は可能なのだ。
もし、ニセ夏油がパンダと同じく夜蛾に造られた呪骸なのだとしたら、同様の隠蔽が為されていないと考える方が不自然だろう。
【その他】
・乙骨と同じく「僕と並ぶ術師になる」と言われた秤先輩は……。
・秤先輩、このまま連載終了までずっと停学になってて登場しなかったら面白いな。