中曽根死すとも新自由主義は死せず。
この記事の内容を嘲笑う呟きが今日何度かTLに流れてきた。
【ロボットが契約書をめくって自動で押印 手作業の負担を軽減 デンソーと日立が開発】
ごりごりの文系であり、大して印鑑を使うこともない私には装置の有用性を論じることは出来ないが、少なくともこれを笑う輩の言わんとする事は理解できる。
「本来は印鑑などという旧弊から脱却し、電子化を推し進めるべき時代なのに、その印鑑を残す形での機械化など何と無駄な事を」と言いたいのだろう。
愚かしいにも程がある。
この時点で彼らの頭の中に「現在、印鑑業界で働く人々の生活」など全く存在していない事は明らかだ。
「効率化」の名のもとに、自分が多くの国民から職を奪いかねない主張をしている自覚など持ち合わせていないのだろう。
もう、ウンザリだ。
一体、我々はこの30年、何度同じことを繰り返してきたのか。
「合理化」「効率化」を旗印に古い社会的慣習を攻撃し、その度に日本経済を衰退させ続けてきたというのに、飽きもせずまた繰り返す。
この手の改革馬鹿の中には、得てして弱者の味方、労働者の味方を標榜する人間が混じっている。
なになに
— 自己責任論撲滅@ブログ「過労伝説」運営中 (@u2qKSkUcSIeBuid) December 11, 2019
「ハンコ文化が非効率だからハンコを自動で押すロボットを開発した」だと。
さすがジャパニーズピーポーは目の付け所が違いますね。
ついでに手書きの履歴書を自動で書くロボットも開発して欲しい。 https://t.co/r5lo0qBjE3
『既得権益』を攻撃することによって、自身の支持者にその恩恵が分配されるかのような幻想を抱かせられるからであろう。
あるいは、自分自身もまた、その幻想を信じ続けているのかもしれない。
だが、幻想は幻想に過ぎない。
国鉄、郵政、教員、医療、法曹、土建、農協、そうした数々の『既得権益』を叩いたところで、往々にして『既得権益』で下層に位置する中産階級を不幸にし、更にはそれ以外の国民の生活基盤を破壊するだけに終わった。
真に労働者の側、弱者の側に立つのであれば、現在印鑑業界で生活の糧を得ている人々の事まで慮るべきであろう。
その中で「合理化」との妥協点を見出していく。
こういった緩やかな手続き、折衝が絶対的に必要だ。
だが、馬鹿ほど事を急き立てる。
愚か者には、漸進的に問題を解決する作業が耐えられないのだ。
他者を思い遣れない人間が、「改革! 改革!」と喚き立てながら、いくつもの問題を抱えながらも社会を円滑に回してきたシステムを破壊していく。
その意味で、今回の自動押印装置は実に現実的かつ、各業界に配慮された人道的な試みではないか。
こういった改革バカを抑制する為に、かつてのように各団体の利益を代表する族議員が必要なのだと改めて思う。
「デジタル化とハンコ文化の両立」を主張した竹本直一IT担当大臣の方が、上記の連中より100倍は真っ当な人間と言える。
いい加減、性急な改革の愚かさに気付き、『既得権益』というレッテル貼りを止めにして、各界の意見を調整しながら緩やかに変化をもたらす方向に舵を切らねば、今後も日本は際限なく衰退国として転落していくだろう。
我々とて、何らかの既得権益を享受する1人に過ぎないのだから。