一昨年も素晴らしかったけど、昨年は一層映画が豊作な年だったなあ。
※以下、ネタバレ注意
遅ればせながら『この世界の片隅に』を鑑賞。
何分、我が家の近くの映画館でなかなか放映しなかったもので。
さて、感想であるが、十分面白い映画ではあったものの、「期待した程ではなかった」というのが正直なところ。
映画『シン・ゴジラ』感想でも引用した『震災ゴジラ!』の著者である佐藤健志さんがサイトに書いていた「平板なのに詰め込みすぎ」という感想を私も抱いた。
どうにも、寸止めな場面が多いというか。
もう少しで感動できそうなのに感動できないもどかしい感覚が残った。
もっとも、この作品は戦時中の日常に焦点を当てたものなのだから、大げさな音楽などで強いて泣かせにくるのは原作者の想いに反する演出であり、淡々と描いたのは正解だったのかもしれない。
とはいえ、仮にそうだとしても、泣き所で泣けない、いま一つ盛り上がりに欠ける映画になってしまったのは事実で、傑作になり損なったという印象は否めない。
佐藤さんの言うように、13話程度のテレビアニメの方が光る作品だったのではないだろうか。
惜しいところもあるが、それはそれなりには良い映画だと言える出来だったからこそなので、100点満点で言えば80点はあるかな。
多くの日本国民にとっては戦前の暮らしというのは『はだしのゲン』と似たり寄ったりの「キチガイな軍人が跋扈し、意地の悪い隣人だらけ」というイメージだろうから、『この世界の片隅に』で描かれるようなごく普通の、幸せそうな生活が戦時中にあったことを見るのは新鮮だろうな、とは思った。
私の(ここは敢えて)平成28年の映画トップ5は『ブリッジ・オブ・スパイ』、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『FILM GOLD』、『聲の形』であり、『この世界の片隅に』はこの5つは越えられなかったが、これらに次ぐ第6位だった『アイアムアヒーロー』に並ぶくらいには面白かったかな。
昨年の初めに『ブリッジ・オブ・スパイ』を観たときは「あ、今年の最高傑作が新年一発目に来ちゃったか」と思ったものだが、何の何の、その後もいくつもの傑作が生まれて、大変嬉しい誤算だった。
特に『君の名は。』は私の中では『ブリッジ・オブ・スパイ』を超える、平成28年最高の映画だったかもしれない。
一昨年、昨年と豊作が続いただけに、今年が一体どうなってしまうのか多少不安ではあるが、(昨年公開の映画とはいえ)『この世界の片隅に』程の良作を年初に見られたのは、幸先が良いからだと前向きに捉えることにしよう。
最後に、引用した佐藤健志さんの『この世界の片隅に』関連の記事を紹介しておく。
この世界の片隅に
すずさん、何がそんなに悲しいの?
国のために死ぬと言うまえに
戦争が醜いのは真実が時に醜いからだ
「戦争はイヤ」の行き着く果て