これは……。2話までだとシリーズ歴代最低の出来かもしれない……。
逆転裁判5 第1話『逆転のカウントダウン』感想はこちら
※以下、ネタバレ注意
何というか、非常にややこしい事件だった。
二転三転する話自体は好みなんだけど、この事件の場合、密室という狭い範囲の中で新事実が次々と出てくるから、その度に「結局のところどういう状況だったのか?」を理解するのに苦労させられた。
2話をクリアした今ですら、まだ自分が全てを理解しきれているのか自信がない。
【天魔太郎の痕跡】
これは肝心な部分で、強引なシチュエーション作りが多かったのも拍車を掛けていると思う。
例えば、当初は真犯人による工作と考えられていた現場に残った「天魔太郎の痕跡」。
それが神憑り(夢遊病)になった天魔ゆめみの仕業ではないかという疑惑が持ち上がり、最終的には銭洗熊兵衛によって偶然残されたものだと明かされたわけだが、このどちらの経緯も不自然極まりないんだよなあ。
ユメミの夢遊病についても唐突に持ち出された感があるのは否めないし、盗みに入ろうとした熊兵衛がさっきまで自分が着ていた(しかも村長の指示で)着ぐるみで正体を隠そうとしたのも理解に苦しむ。
まだこのどちらかだけなら、目をつぶろうという気にもなるけど、立て続けにこれだけ強引なことをやられるとさすがに萎えてしまう。
事件を複雑にするために、真犯人の意図とは無関係なところで天魔太郎の痕跡を作り、その真相も解り難くしたかったのだろうけど、それならもっとシナリオを練ってほしかった。
【変装】
そして、事件の核心である真犯人・美葉院秀一によるグレート九尾の変装。これもまた強引だった。
いくら覆面越しとはいえ、実の父親の声を赤の他人と間違えるというのも納得しづらいうえに、ユメミちゃんがグレート九尾の覆面を「外すはずがない」理由として「覆面レスラーにとって命だから」を挙げていたのもガックリ来た。
覆面レスラーが誇りにかけて覆面を守るのはリング上での話であって、親子二人しかおらず、さらには殺人事件が起きており、父親も何らかの危害を受けたと思われるような状況なのに、その論理で押し通すのは無理があり過ぎる。
「ユメミちゃんがリングの外であろうと覆面レスラーの覆面を取ってはいけないと心底信じていた」ということで押し切りたいのであれば、それに関係したエピソードを用意して、法廷の中でそれが披露されるようにすべきだっただろう。
【真犯人】
今回は逆転裁判1と同じく、1話2話続けて犯人が最初に明かされる倒叙形式だったけど、あまり効果的でないどころか、ストーリーの足を引っ張ることになっていたと思う。
熊兵衛がちゃんとロビーを監視していなかったことが明らかになった後、天魔太郎がロビーの方へ逃げていったとのユメミちゃんの証言に対し、「監視カメラに映っていないから玄関から逃げてはいない」ということが問題になった。
この時点で、ロビーにいたという美葉院のアリバイは崩れているのだから、天魔太郎の中身が美葉院で、ロビーに逃げた後、着ぐるみを処分し、何食わぬ顔で屋敷内に留まっていたという可能性もあるのに、そのことには誰も言及しない。
それどころか、あろうことか弁護側が提示した(プレイヤーが提示させられた)天魔太郎の逃走経路は「窓から飛んで行った」だった。
プレイヤー視点では最初から犯人が明かされていて、その人物が疑わしい状況にあるのに、登場人物が不自然なくらい彼に目を向けないものだから、この辺はプレイしていて非常にストレスが溜まった。
逆転裁判1の場合は、犯人が憎き仇だったから、徐々にそこに近づいていく感覚が楽しめたけども、美葉院の場合は小物中の小物で、特に主人公サイドと関わりがあるわけでもないから、本当にこの話を倒叙形式にした意味が分からないなあ。
【ココロスコープ】
2話にして早くも、ココロスコープのシステムが邪魔になってきた……。
たしかに1話と同様に、弁護側の証人や被告人の混乱を解く使い方をされていて、「みぬく」程の強引さはないんだけど、使いどころが悪すぎると思う。
真犯人・美葉院秀一を証言台に引きずり出して、いよいよ決着だと勢い込んでいたのに、途中でココロスコープによる天魔市長のカウンセリングに移ってしまったから、完全に気が削がれてしまった。
巌徒局長のようなラスボス格の犯人でもないんだから、一度真犯人を舞台にあげたなら間をあけるのは止めてほしい。
しかも、その間ユガミ検事は空気と化しているし。
「みぬく」を探偵パートでのゆさぶりの手段として使ってきたときは、「上手いこと活用したなあ」と感心したのに、新システムでみぬくと同じ轍を踏んでいたら何の意味もない。
ココロスコープも同様に探偵パートで使っていた方が良かったんじゃないかなあ。
それと、指摘することが求められている「おかしな感情」もあまりに解り難い。
開かずの間の扉をグレート九尾が開いたときの天魔市長の感情に「悲しみ・恐怖」が混ざっていることを指摘しなければならない場面があったのだけど、私はそこで何度も間違えてしまった。
天魔市長は睡眠薬を盛られて意識が朦朧としている状態で暗闇に閉じ込められていたわけで、グレート九尾が扉を開けて光が刺したからといって、まだ「恐怖」していたとしても何の不思議もないだろう。
それで「『悲しみ・恐怖』の感情が残っているのは矛盾している」と言われても全く納得できない。
こういうシステムにするなら、誰もがおかしいと思えるような「感情の矛盾」を答えにしてくれないと。
【ユガミ検事】
今のところ歴代のライバルキャラの中でも印象が薄い。
もちろん、キャラクター自体は奇抜なんだけど、ただそれだけと言うか。
一つには、ユガミ検事が強引に被告人を有罪にしようとする動機がよく分からないのが大きいだろう。
歴代のライバルは、初登場の章の時点で敵対の「動機」が断片的ではあっても描かれていた。
例えば無印のライバル検事である御剣の動機は「被告を必ず有罪にするという信念」で、逆転裁判2の狩魔冥は「成歩堂への復讐」、3のゴドーは「成歩堂を倒すこと」が目的だと、それぞれ2話の時点で明かされている。
逆転検事シリーズでも、ロウ捜査官は検事を憎んでいる描写があったし、2の水鏡裁判官は検事審査会の使いとして、御剣の排除を目的としていることが示唆されていた。
対して、ユガミ検事の場合は、強引に被告人を有罪にしたがる理由も分からないし、弁護人であるオドロキ君個人を標的にしている様子もない。
「心理操作」という特技もほとんど発揮されていないから、囚人検事という肩書こそインパクトはあるものの、その強烈な設定だけの出オチキャラになってしまっていた。
というか、正直ロウ捜査官とかなりキャラが被っている(「黙りなァ!」も含めて)。もうちょっと差別化できなかったものか。
どうしてもロウさんが浮かんでくる下町の江戸っ子(というかヤンキー?)みたいな口調ではなく、いっそお武家様といった風情のキャラにすれば良かったのに。
【その他、引っかかったところ】
・ユメミちゃんから殺人が起きたことを聞く前に、パーティ会場が騒ぎになっていると言っていたのに、なぜかオドロキ君が現場に行くまで誰も駆け付けてない。
・心音が18歳で弁護士になったということに今更オドロキ君が驚いているのが謎。
昔から御剣やメイ、5の時代にも牙琉のような異常な若さで検事になったキャラがいるのに。
検事は若くしてなれても、若くして弁護士には中々なれないのだろうか。
・18歳の女性が昼間出歩いているからといって、「学校はどうした?」と補導しようとする警官。
その年齢なら普通に働いている人も多いだろうに……。心音は見た目が幼いというキャラでもないから、心音が警官を投げ飛ばす場面をやりたくて無理やり会話を作ったことが見え見え。
・探偵パートの時点で「村長が合併に反対するグレート九尾だから殺されたのでは」という話は出ていたのに、法廷で改めてその話題が検事側から出てきたら、なぜか驚く弁護側。
・裁判中、マスターキーが発見されたのに、それで「開かずの間」が開く可能性に誰も言及しないのは不自然に感じた(その前の段階で「開かずの間はマスターキーでも開かない」ということが語られたことはなかったはず)。
・裁判長が妖怪が法廷に現れた事例はないと言ってたけど、ちなみのことを忘れたのだろうか。
・お騒がせキャラである銭洗熊兵衛が最後までただのクズなのも地味に痛い。
似たような役回りのオバチャンよりもやってることが数段悪質で、衣袋武志のことで落ち込んだりと徐々に同情できる作りになっていたオバチャンと違い、一貫して小悪党のままだし。
こんな自分に良くしてくれた村長の死を悲しむとか、そういった一面があっても良かったんじゃないか。
5の評判がそんなに良くないのは聞いていたんだけども、何だかんだ言って実際は逆転検事1くらいの面白さはあるだろうと信頼していただけに、結構ショックが大きい。
あくまで2話までの感想ではあるけど、今のところは逆裁4以下という印象(4は1話・2話だけなら前作のエピソードとそれほど遜色ない出来だった)。
おそらく5話くらいまではあるはずだし、ここから何とか逆転してもらいたいと心から思う……。