「どっちか現時点では判断つかないようにしてるなあ」くらいに捉えてたんだけど、段々とハルケンブルグ王子の方に心の天秤が傾いてきた。
※少し追記あり
【一人称】
今週のベンジャミン第1王子に関しては、能力で肉体をハルケンブルグ第9王子に乗っ取られているか、ベンジャミン王子本人か、敢えて読者には解らないようにしていたように思う。
それにしてはベンジャミン第1王子本人だと確信している人が多い印象だったのだが、どうもモノローグでの一人称が「オレ」であったことが最大の理由のようだ。
しかしながら、ハルケンブルグ第9王子も過去のモノローグでは一人称が「オレ」だったことがある。
察するに、彼がもともと私生活で使用していた一人称は「オレ」の方で、余裕が無い時の思考では今もそれが出て来るのだろう。
この時点で一人称は判別の根拠にはならない。
【非嫡出子】
私としては、現在の情報ではどっちとも分からないようにしてあるだろうし、あまり考えるだけ無駄だと思い、深く追求しないでいたのだが、ふと思い出したことがあった。
それは、ハルケンブルグ第9王子と電話で会話している際のウンマ第1位王妃の部屋にベビーベッドがあるという指摘だ。
これ自体は知らない人のツイートがたまたま流れて来たのを見ただけであり、その時は「へー。誰の子なんやろ」くらいにしか思わなかったのだが、今週「ベンジャミン」が語った『オレの非嫡出子』なる言葉と私の中でビタリと繋がってしまった。
ウンマ第1位王妃が庇護しているこの子供こそが、『オレの非嫡出子』なのではないだろうか。
彼女は明らかに隠し子(と言っていいのか分からないが)であるハルケンブルグ第9王子の味方だ。
そして、バルサミルコ兵隊長の肉体を乗っ取った直後のハルケンブルグ第9王子と、今後について何事か談合をしていた。
おそらくこの時、ハルケンブルグ第9王子は実母に対して、非嫡出子に王位を譲る計画を託したのだろう。
【ウンマ政権】
王子たちは長子のベンジャミン第1王子もそれほど高齢ではない。
「オレの非嫡出子」は親が誰にしても、まだかなり幼いはずだ。
つまり、幼王に代わり、誰かが政を代行する必要がある。
そして、上記の赤子がそうならば、「先代国王」たるベンジャミンの王太后にして、新たな王を庇護してきたウンマこそが、大きな権力を持つようになるだろう。
特殊戒厳令によって王子たちを皆殺しにし、最後に自身が乗っ取ったベンジャミン第1王子をも死に至らしめることにより、実母にして同志たるウンマ第1王妃に実権を握らせることこそが、ハルケンブルグ第9王子の計画なのではなかろうか。
彼女が権力を握れば、ハルケンブルグ第9王子の支持者たちを要職につけ、王政を思うがままに「改革」できる。
例え自身がいなくなろうとも、抱いた大志は実現できるのだ。
【バルサミルコは死亡】
ただし、ハルケンブルグ第9王子が死ぬつもりかというと、微妙に感じる。
死ぬ覚悟はしているかもしれないが、可能ならば生き延びるつもりのように思う。
現在の「ベンジャミン」にはベンジャミン第1王子の守護霊獣が取り憑いている。
もしも、彼の肉体がハルケンブルグ第9王子に乗っ取られているのなら、転移先の肉体であるバルサミルコ兵隊長は既に死亡していることになる。
バルサミルコ兵隊長の肉体に宿ったハルケンブルグ第9王子は能力を使用できたことになるから、人格が転移すると念能力も移ることを意味するからだ。
つまり、現在の「ベンジャミン」の肉体にはベンジャミン第1王子とハルケンブルグ第9王子の人格が同居していることになる。
本来ならば転移先の肉体(この場合だとバルサミルコ兵隊長)が死亡すると、射貫かれた側(この場合だとベンジャミン第1王子)の肉体で本来の人格が目覚めてしまう。
ハルケンブルグ第9王子はその弱点を催眠剤により本来の人格を眠らせることで、10時間ほどの猶予を得ることに成功した。
10時間ほど。
何かを思い出す数字ではないか。
そう、今週、「ベンジャミン」が動ける猶予として語っていた時間とほとんど同じなのである。
即ち、「9時間半」という時間は実は発症から昏睡までの時間ではなく、催眠剤の効果が切れてベンジャミン第1王子の人格が目覚めてしまう時間なのだと考えられる。
【※追記】
よくよく考えると、そもそも、昏倒するまで10時間後なのに、発症から僅か30分程度でほとんど顔も合わせていない他人にも分かるほどに顔色が悪くなっているのは早すぎるだろう。
ハルケンブルグ第9王子人格のオーラが、守護霊獣も出現できない程に消耗していることによる疲労が顔に表れていると考えた方が自然だ。
【ガス欠】
しかしながら、発症と昏睡の話をしている以上、ベンジャミン第1王子の肉体が感染し、助かる見込みが無いこともまた事実なのだろう。
だが、ハルケンブルグ第9王子がむざむざ兄と心中してやる必要は無い。
ベンジャミン第1王子の人格が目覚める前に新たな肉体へと逃亡し、(その転移先の人格を生贄に)病に侵された肉体に兄を置き去りにするつもりだろう。
ところが、今のところそれが出来ない。
ハルケンブルグ王子の守護霊獣が消えてしまっているからである。
作中で描かれているように、現在、「ベンジャミン」に憑いているのはベンジャミン第1王子の守護霊獣だけだ。
これを「ベンジャミン」の人格が第1王子本人のものである根拠として挙げている人もいたが、私はモモゼ王子の守護霊獣と同様に、ガス欠を起こしてしまったのだろうと考えている。
あれだけ強力な能力を短期間に連続して使用しているのだ。
そうなっても全くおかしくない。
ハルケンブルグ第9王子としても想定はしていただろうが、歩みを止めるわけにはいかない。
このまま守護霊獣が復活するまでオーラが回復できなければ諸共に死ぬ覚悟を決めて、ベンジャミン第1王子に生物兵器を感染させたと思われる。
だが、もしも守護霊獣が復帰し、再び転移できたその時には、転移先の人物の肉体を使い、自身がカキン帝国の舵を握るつもりに違いない。
【葬列の意味】
とはいえ、そもそもどうやってハルケンブルグ第9王子はベンジャミン第1王子の肉体を乗っ取ったのだろう。
まず、ベンジャミン第1王子の私設兵の警戒を掻い潜り、自身の臣下を引き連れて王子に接近せねばならない。
バルサミルコ兵隊長の姿で油断させようにも、ハルケンブルグ第9王子の守護霊獣が憑いているのを見られてしまったら一発でバレてしまう。
その困難を実現する為に使われたのが、葬列のセレモニーである。
ハルケンブルグ第9王子の性格から考えて、あんな周囲を巻き込んだ贅沢なパフォーマンスを好んでやるわけがない。
何かしらの企みがあるとは思っていたが、それこそがベンジャミン第1王子の肉体を乗っ取ることだったのだ。
バルサミルコ兵隊長を乗っ取ったハルケンブルグ第9王子は、経過を見届けるという名目で、自身の遺体を運ぶ私設兵と共に第1層に戻るとベンジャミン第1王子に報告している。
これで疑われることなく、能力発動条件である臣下と共に行動できる。
そして、おそらくはベンジャミン第1王子が単独で棺に近付くように仕向けた(ウンマ王妃に唆させたのかもしれない)か、もしくは、兄ならばそうするはずと読んでいたのだろう。
王子には互いの守護霊獣も見えないから、ベンジャミン第1王子だけならば「バルサミルコ」の中身がハルケンブルグ第9王子とバレることもない。
ベンジャミン第1王子は自身の大事な部下を殺したクラピカ達に敬意を表して、わざわざ死に方を選ばせる電話をかけさせるような男である。
ツェリードニヒ第4王子とは違って関係も悪くない実弟が、王位を争う暗闘の末に命を落とした。
その遺体に「敬意を表そうとする」のは想像に難くない。
ハルケンブルグ第9王子の私設兵と、「バルサミルコ兵隊長」が傍にいるハルケンブルグ第9王子の棺に1人で近づいてしまったのだ。
致命的な慢心と油断……と言ってしまえばそれまでだが、それは少々酷かもしれない。
ハルケンブルグ第9王子が死んだ以上、成りたての念能力者である私設兵たちは脅威にはならない。
しかも傍にはハルケンブルグ第9王子の死によって「シロ」と確定したバルサミルコ兵隊長もいるのだ。
何だかんだ言って、実弟の死に多少の動揺もあったのかもしれない。
いずれにせよ、その瞬間、ベンジャミン第1王子の命運は尽きた。
兄の肉体を乗っ取ったハルケンブルグ第9王子は直ちに、
・特殊戒厳令の発令
・バルサミルコ兵隊長の肉体の殺害
・ベンジャミン第1王子の肉体への催眠剤投与
・ベンジャミン第1王子の肉体への生物兵器感染
を実行し、ベンジャミン第1王子の私設兵を遠ざけつつ、国王軍を使って王子たちの皆殺しに動いたわけである。
【少年は残酷な弓を射るは王子にも効く】
さて、ハルケンブルグ第9王子の能力である『少年は残酷な弓を射る』は王子に対しては効かないのではないか? という疑問を見かけた。
だが、この意見にはいささか誤解があるように思う。
まず、前提として「守護霊獣は守護霊獣が憑いた者(王子)を直接攻撃しない」というルールがある。
バルサミルコ兵隊長らはそのルールを正確に推測し、「守護霊獣は王子が王子を直接殺すような能力の開花はサポートしないはず」と結論付けた。
逆に言うと、実際に発現しているハルケンブルグ第9王子の『少年は残酷な弓を射る』は、「王子を直接殺すような能力」には該当しないということだ。
また、ハルケンブルグ第9王子自身も、『少年は残酷な弓を射る』で王子を標的にすることを想定している。
『少年は残酷な弓を射る』は王子にも有効なのである。
【ハルケンブルグの狂気】
もし無事にハルケンブルグ第9王子の守護霊獣が復活し、他の人間に転移できたとすると、自身の非嫡出子が王となった体制下で国政に関わるつもりだろう。
そして、その先は……?
彼は「尊い犠牲」の上で、理想国家の為に自身が戦い続けることを選択した。
そう、戦い続けるのである。
この先もずっと。
ハルケンブルグ第9王子は最終的に王に仕立てた我が子の肉体を乗っ取ることすら計画に入れていると私には思えてならない。
誰かが死をもって止めねばこの男は永久に、存在しない理想国家の建立の為、転移を繰り返すことだろう。