逆転裁判6 第2話『逆転マジックショー』について。
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※以下、ネタバレ注意
感想で書いた通り、私は逆転裁判5において「ユガミ検事があれ程まで強引に被告人を有罪にしようとする理由」が描かれなかったことを不満に思っていた。
そのせいで、ユガミ検事が真相を見通せないだけの単なる無能で終わってしまっていたからだ。
だからこそ、今作のライバルキャラクターであるナユタ検事が初めて登場した『逆転マジックショー』の中で、彼が強引に被告人を有罪にしようとするのは『思い込みの強い狂信者だから』ということが示唆されたのを喜んだ。
動機が描かれた方が敵役として深みが増し、それを打ち破ったときのカタルシスも大きくなる。
『逆転マジックショー』が逆転シリーズでも屈指の名エピソードとなったのは、真犯人の衝撃もさることながら、ナユタ検事がきちんとライバル検事として確立されていたからというのもあるだろう。
しかしながら、その後の第5話において、実際にはナユタ検事は狂信者などではなく、人質をとられた状態で意に反することを強要され、全てを諦めてしまっただけだと明かされることとなった。
これにより、私が第2話で考えていたナユタ検事への印象は儚く消え去ったわけだ。
だが、ここで一つ疑問が生まれる。
全てを諦めていたのなら、なぜわざわざ異国の地で事故として扱われようとしている案件に首を突っ込み、自らみぬきちゃんを殺人罪で起訴したのか?
この件はクライン警察が捜査し、職務上やむを得ず起訴したわけでもなければ、〇〇(知らない人はこの記事を読んでいないと思うが一応伏せる)に強要されて行ったわけでも無い。
ナユタ・サードマディという男が、彼自身の意志で実行したものだ。
超好意的に解釈すれば、「このまま事故として処理されれば、みぬきちゃんは『マジックの失敗で人を死なせた少女』になってしまうため、オドロキ君の力を信じて敢えて殺人罪で起訴した」ということになるが、実際のナユタ検事は明らかに本気で彼女を罪に陥れようとしており、到底この解釈が真実だとは思えない。
彼は本気でみぬきちゃんを起訴し、更には裁判の過程で他に怪しい人物が現れても、最後までその姿勢を変えようとはしなかった。
一体その動機は何だったのか?
これはもう、成歩堂みぬきという少女に対して、悪意があったと考える他ない。
そして、その悪意が生まれた理由は、もちろん王泥喜法介以外にはあり得ないだろう。
平たく言えば、ナユタ検事はオドロキ君とみぬきちゃんに嫉妬していたのだ。
彼は止むに止まれぬ事情から、かつて志した道とは真逆の人生を生きてきた。
それに対し、生き別れた義兄弟のオドロキ君は以前と変わらぬ人格のまま、弁護士の道を突き進んでいる。
しかも、まるで妹のような少女と、楽しそうに過ごしながら。
日本に来たナユタ検事は当然オドロキ君の今の姿について調べただろうし、このような彼の現状も知ったはずである。
ナユタ検事はきっと憎んでしまったのだろう。オドロキ君と、そして彼が妹のように接するみぬきちゃんを。
つまりは、2話のナユタ・サードマディは所謂クレイジーサイコホモ、あるいはクレイジーサイコシスコンであり、「諦め」とはまた違う私怨から、みぬきちゃんを無実の罪に陥れようとしたのだと考えられる。
最後にはオドロキ君の手によってその憎しみからも解放されたわけだが、ある意味では、これまでの逆転シリーズのライバルキャラの中でも最も危険な男だったと言えるかもしれない。
彼の境遇を思えば、妹と楽し気に暮らすオドロキ君に対して複雑な感情を抱いても無理からぬことではあるが。