灼眼のシャナIII -Final- 第2話 「来たるべきもの」
【傀輪会】
冒頭のシーンは、[仮装舞踏会(バルマスケ)]による、上海外界宿総本部『傀輪会』襲撃の様子です。
傀輪会は、フレイムヘイズを指導者に据えた幕僚団『クーベリックのオーケストラ』(これについては1話感想参照)とは性質が異なり、人間のみで構成されています(最高幹部は「大老」と呼ばれた)。
この傀輪会の指導の下、中国から東南アジアにかけての外界宿は動いていました。
ドレル・クーベリックを失った後、世界の外界宿を主導する欧州は、フレイムヘイズと人間で主導権争いを始めました。
これにより、情報や連絡の齟齬といった実務上の問題が発生、その被害を受けた東アジア側は、欧州への不信感と、権力争いに巻き込まれる警戒感を強めました。
その後、ようやく欧州も互いに噛み合うことの愚を自覚し、臨時の指導者としてゾフィー・サバリッシュを招きます。
ある日、ゾフィー・サバリッシュを頂点としたフレイムヘイズらによる新たな臨戦態勢を構築するという布達が欧州から全世界に発せられました。
各外界宿とフレイムヘイズの協力を求める旨が強く込められた一文です。
これを、傀輪会は先の事情から馬鹿正直に受け取ることが出来ませんでした。
権力争いの延長線上にあるおためごかし、欧州の権限拡大を狙う自分たちへの不当な介入、謀略であるとすら受け取っていました。
もちろん、中には非常時ゆえ積極的に協力すべき、欧州には野心などない、という異論もでましたが、傀輪会の大老らはこれに、欧州の布達を別の形で受容し、実現させるという行為で応えました。
すなわち、彼らの担当する東アジア管区で独自に謎の襲撃者(この時点では外界宿側は、襲撃者達の正体をバルマスケと看破しえていない)への網を張り、誘い込んだこれを一気に殲滅するという作戦行動です。
中国全土へと索敵の網を張り、敵を誘導、予想された行動線の先、上海に持てる全戦力を揃え、これを迎え撃ちました。
しかし、作戦は失敗します。
この「集結」という行動こそ敵の狙ったものであり、そして、肝心の上海での決戦で完敗を喫したことによって。
起死回生をはかった上海総本部への籠城も失敗し、ここに東アジア地域のフレイムヘイズは壊滅しました。
以上が原作の描写を簡単にまとめたものです。
アニメ冒頭は、その最後の生き残りであるフレイムヘイズ『剣花の薙ぎ手』虞軒が、〝千変〟シュドナイに挑む場面です。
このシーンの直前、虞軒が半世紀以上連れだってきた「大老」の一人である項辛を、徒に食われる前に自らの手で葬る場面があったのですが、それも含めて全カットでしたね。
とある2人の今後と絡めた、印象深いエピソードだけに、非常に残念です。
シュドナイが「蚩尤」と呼ばれていた経緯は自分も知りません。
おそらく、まだ読んでいない外伝にでも描かれたエピソードだと思うのですが、どれに載っているのか分からないんですよね。
かつて中国で「蚩尤」を名乗っていた時期があり(「シュドナイ」という名も通名でしかありませんから)、虞軒とはその頃からの知り合いということのようですが。
シュドナイが言っていた、「敵の中でも独断に走っていた上海を潰したのだ。これで他の領袖らも欧州に、ゾフィー・サバリッシュの下に集結するようになる」というのは、上記のように欧州と協同するのを躊躇っていた他地域の外界宿も、上海総本部の壊滅により、傀輪会共々(大老のほとんどは、戦前に項辛によって逃がされていた)ゾフィーに従うだろうということです。
フレイムヘイズとしては、手痛い損失と引き替えに、ようやく一致団結できるようになったということになります。
あ、あと、原作では虞軒は声もなく消滅していますね。
何であんなに絶叫させたんだろ。
【シャナ】
原作のシャナは訓練の最中に他のことに意識をやってぼさっとすることなど、まず無いんですけどね。
ゾフィーの手紙についての悩みも、訓練後にマージョリーへと相談を持ちかけただけです。
あまり文句ばかり言いたくはないんですが、つくづくキャラクターの強さと魅力がスポイルされていると思わざるをえません。
【仮装舞踏会】
カブトムシみたいなのは「巡回士(ヴァンデラー)」(組織の戦闘員)〝驀地祲(ばくちしん)〟リベザル、ショタっぽいのが「捜索猟兵(イエーガー)」(巡回士の後援要員)〝蠱溺の盃(こできのはい)〟ピルソインです。
どちらも組織の幹部クラスであり、参謀ベルペオルの側近です。
腹に顔のある鳥みたいな徒は〝翠翔(すいしょう)〟ストラスで、布告官(ヘロルト)という、組織中枢と現場の連絡役を務める職務にあります。布告官の中でも古株だそうです。
盟主である〝祭礼の蛇〟は、数千年前の戦いで紅世と現世の狭間に放逐されており、それ以来組織は『三柱臣(トリニティ)』と呼ばれる最高幹部ヘカテー、シュドナイ、ベルペオルが率いてきました。
盟主が失われてから、バルマスケはその帰還の為の方策を準備するかたわら、紅世の徒の為の「互助共生組織」として機能しており、構成員のほとんどは盟主のことをあまり知りません。
ゆえに、彼らからしてみれば、いきなり「盟主」を名乗るミステスが現れて、自分たちが長年仕え、崇拝するヘカテーやペルペオルを傅かせているようにしか見えません。
自然、盟主への反感が、組織の構成員の間に広がっていました。
これを解消するために、ベルペオルはアニメで描かれた「謁見の式」を開いたわけです(誰かが盟主に挑むだろうことも計算に入れて)。
リベザルが悠二に挑むシーンは原作そのままでしたが、うーむ、やはりリベザルの心情描写がない分、彼(や戦いを見た徒たち)が盟主に服従する経過に説得力が薄かった気もしますね。
単純に負けたから渋々傅いたようにも見える気が……。原作未読の方々はどういう印象を受けたのか気になります。
悠二、ヘカテー、ベルペオルの後ろで唄っていた徒は〝笑謔の聘(しょうぎゃくのへい)〟ロフォカレです。
「とある一党」の一員で、ここには「見物」に来ており、なぜか盟主や三柱臣にそれを許されています。
彼については後々触れられることでしょう。
現状、バルマスケ構成員以外では、戦闘要員として呼ばれた〝壊刃〟サブラク、『大命』成就の為の技術者〝探耽求究(たんたんきゅうきゅう)〟ダンタリオン教授、ロフォカレの3人が本拠地にいます。
あとは、〝螺旋の風琴(らせんのふうきん)〟リャナンシー(〝屍拾い〟ラミー)が、動員されているシーンがありましたね。
この人の目的や、バルマスケと繋がっている経緯も、アニメでは描かれていないので、不明のままだよなあ。
ペルペオルの台詞で「なぜ盟主は代行体として〝暴君〟ではなく、このミステスを~」みたいなものがありましたが、今後〝暴君〟の解説もあるんだろうか。
それとも、2期で既に解説済みだっけか。
簡単言えば、2期で悠二から出てきた西洋鎧が〝暴君〟です。
悠二から渋い男の声が発せられるのは映像でみると想像以上に違和感があった。
【悠二帰還】
電車に乗って。
悠二ではなくとも、交通機関が発達した現代では、余計な力を使わずに済むので、紅世の徒が人間の乗り物を利用することは珍しくないそうです(大概の場合は運賃も払って)。
佐藤も原作では絶叫を口に出したりしていないんですが、絶叫させるのが好きだなこのアニメ。
分かりやすいからなんでしょうけど、多用すると安っぽく見えます。
さて、悠二が御崎市に帰ってきた意図、彼と仲間達との遣り取りが次週の見所になるでしょう。