ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

映画『64‐ロクヨン‐前編』感想

 後編を観るまでは評価は保留するけど、うーん……。

※以下、ネタバレ注意  警察や報道の業界について全く知識がないから的外れな感想なのかもしれないが、記者クラブの連中の振る舞いがバカバカし過ぎて、どうもリアリティを感じないんだよなあ
 警務部長や本部長のキャラクターもお約束的な「キャリア組」という感じで、古臭いというか、陳腐な二時間ドラマを見せられているような安っぽさを感じてしまった。

 つい最近、週刊少年ジャンプ23号 感想にてワールドトリガーのマスコミの造形について苦言を呈したばかりなんだけど、今作の記者達のクズっぷりは、それを遥かに下回る。
 いかに日本のマスコミの程度が低いとはいえ、さすがにここまで無礼千万な設定にされてもなあ。安易な悪役を作っている印象しかなくて、作品自体をチープにしてしまっていると思う。


 最後の方は、その記者クラブとの和解みたいな話になっていたけれど、事故を起こした主婦の発表を実名で行おうが匿名で行おうが、どちらにしろ記者クラブは県警が垂れ流した情報をコピペしているだけってことじゃないの?
 県警に対しては異常なまでの行動力で実名発表を求めていたけど、「そんな行動力があるなら自分で調べろや」と思ってしまった。

 そもそも、新聞やテレビで、「一方的に運転手が悪いとは言い切れない事件」について匿名で報道されていることはよくあることだから、記者クラブがここまで執拗に実名発表を求めていたこともよく解らない。

 しかも、ただの県警広報室の職員が事故の被害者について、到底、職務で必要になるとは思えないほど深い調査をしていて、単なる一広報にすら劣る記者達の取材力に作中でほとんどツッコミが入らなかったのも気になった。

 主人公が冗談半分にその部下に対して「取材のやり方を教えてやれよ」と言う場面はあったものの、それは記者クラブに対して面と向かって言ってやってほしかったなあ。

 記者たちのクズさにほとんど触れられることもないまま、一方的に県警広報側が非を認めたという印象で、記者クラブが主人公に歩み寄ったときも、「何を偉そうにしてるんだ」という感想しか浮かばなかった。

 どうも誇張が激しい腐った脇役と、その処理の拙ささのせいで、全体的に軽薄な印象を受けたものの、本番は6月放映の後編だろうから、まだ期待は捨てないでおきたい。


 期待していると言いつつ、文句ばっかり書くのもあれなので良かった点を言うと、雨宮家を再度尋ねたときに、思わず涙が止まらなくなる佐藤浩市の演技は素晴らしかった。
 「普通に振る舞おうとしているのに、涙が止められない」という演技は、真に迫るものがあった。あれ程に自然に演じられる俳優さんはなかなかいないと思う。