というより、夜蛾学長こそが黒幕で(偽)夏油を動かしているのかも。
※以下、ネタバレ注意
呪術協会内部には夏油の協力者が存在する。
これは五条先生も推測している事であるが、それ以前に夏油の台詞から既に明らかな事実であった(逆に五条先生がどうやって内通者の存在に辿り着いたのか分かんないんだけど)。
夏油曰く、少年院に特級呪霊を発生させたのは、宿儺の実力を測るのが目的とのこと。
しかし、虎杖ら高専の1年生に任務を与え、少年院に向かわせたのは伊地知であり、彼に命じた協会上層部の誰かである。
つまり、この誰かは夏油の意に沿って1年生を特級呪霊の所に向かわせたことになる。
五条悟はこの一件について、楽巌寺学長ら虎杖の死刑猶予に反対する協会内保守派が画策したものだと断定していたが、実際にはそれは誤りだったわけだ。
そして、夏油の計画に加担し、少年院突入の任務を1年生達に背負わせた裏切者の正体こそが、呪術高専東京校の学長たる夜蛾 正道だと私は予想している。
彼に内通者の疑惑を抱いた最も大きな理由は、漏瑚による五条先生の待ち伏せの件だ。
襲撃を受けた時、五条は夜蛾学長との会食に向かう途上だった。
つまり、漏瑚は会食の予定を知った上で、その道中に伏せていたことになる。
では、一体誰が(おそらく夏油を通して)会食の情報を漏瑚に漏らしたのか?
無論、プライベートな予定だから特段周囲に隠していたわけでもないだろうが、まず最初に疑うべきは当事者である夜蛾学長だろう。
その疑惑は、第53話『完遂』にて確信に変わる。
特級呪霊グループの襲撃を受けた際、夜蛾は真っ先に「自分が天元様のところに行く」と言い出し、1人だけ現場から離脱していった。
しかし、本命である真人の目的がまさにその天元様の所であるにも関わらず、夜蛾は『一切真人と接触する事は無く』、更に『どういう訳か』夜蛾と同行していなかった呪術師だけが真人の手にかかって殺された。
あまりにも出来過ぎている。
要するに、高専への襲撃は夜蛾が手引きしたものであり、作戦に邪魔が入らぬよう他の主要な術師はこの場に留まり続けるよう役割を振りつつ、「天元様の護衛」を自らが買って出たわけだ。
さて、ここまで私は夜蛾学長のことを便宜上、「夏油の協力者」と書いてきた。
だが、実際にはこの夜蛾こそが一連の事件の首謀者であり、夏油はその駒に過ぎないのではないかと考えている。
何となれば、私は現在暗躍している「夏油」を名乗る男は、真っ赤な偽物であると睨んでいるからだ。
協会内部の「協力者」が夜蛾であり、今の夏油がニセモノだとすると、この偽夏油の正体として一番考えられるのは何か?
そう、もちろん「呪骸」だ。
おそらく夜蛾は夏油の遺体を「縫製」して新たに魂を吹き込み、己の計画遂行の手足となって動く忠実な呪骸を作り上げたのだろう。
そもそも、私は0巻(呪術高専)の時点で夜蛾学長が本物の夏油に協力していた可能性もあると見ている。
彼は夏油が何かを企んでいるのではないかという五条先生の懸念を、「未だ動向が掴めないこと」を理由に「杞憂」と一蹴した。
だが、考えてみてほしい。
百人以上の人間を殺した特級呪術師が、行方をくらまし、今どこで何をしているのか把握できない状況を不安がらない人間などいるだろうか?
動向が掴めないからこそ、一層懸念を強くするのが普通の思考だろう。
当初は私もこれは「夜蛾学長が信じられない程の無能だから」だと思っていたのだが、むしろ夏油の動きを少しでも五条先生に邪魔されないようはぐらかしていると考えた方が自然である。
後に描かれる夏油が夜蛾学長を嘲笑うかのような↓の台詞。
これにしても、最初から夜蛾が「囮にまんまと乗ったフリをして、全戦力を新宿と京都に向かわせる」筋書きだったという風に解釈できる。
脳筋学長が必死に演技をして皆を騙している光景を想像して面白がっているわけだ。
今回の忌庫襲撃事件にしても、百鬼夜行にしても、夜蛾学長の指示が悉く(偽)夏油の用意した囮にまんまとハマる内容になっており、全てが夏油の有利になるよう働いている。
果たしてこれが単なる無能や偶然の産物と言えるだろうか?
とはいえ、夜蛾や偽夏油のやり方を見ると、明らかに(故)夏油の思想とは一線を画している。
呪術師を同胞と考え、特に若い呪術師の命は出来るだけ奪わないようにしていた(故)夏油とは違い、彼らは平気で1年生を死地に追いやり、呪霊ごときが大切な呪術師であるはずの順平を殺す事に加担し、今回も虎杖以外の生徒の命を何とも思っていない言動をしていた。
同胞たる呪術師だけの世界を作ろうとしていた(故)夏油に賛同していた訳では無く、全く別の思惑で手を組んでいただけで、今もその目的を達成する為だけに特級呪霊グループを利用しているに違いない。
夏油のフリをした呪骸を生み出したということは、ほぼ間違いなく旧夏油一派の呪術師たちのことも駒として使うつもりなのだろうが、もし彼らが偽夏油のことを信じてしまったら、便利に使い潰された挙句、ゴミのように捨てられる運命が待っているはずだ。
根っからの悪人とは思えないから、夜蛾には夜蛾なりの大義があってやっているのだろうが、少なくとも目的の為には手段を選ばぬ、血も涙もない男なのは間違いないようだ。
一番痛いのは五条先生が上層部を憎むあまり目が曇って、少年院の一件と特級呪霊グループの協力者と結び付けることが出来ずに、「犯人捜し」すら放棄してしまっていることだ。
伊地知をきちんと問い詰めて、一体誰の意志で「少年院に1年生を派遣すること」が決まったのかを調べていけば、ひょっとしたら夜蛾に辿り着けるかもしれないのに。
もっとも、おそらく夜蛾は、この五条先生の上層部に対する異常な憎悪も織り込み済みで、この件を画策したのだろうけど。
【関連記事】