今回のエレンの台詞は「ヒストリアが妊娠しているのはエレンの子供」という前提で見ると一気に紐解けるよね。
【イェレナ】
結局、彼女の言葉はどこまでが真実なんだろう。
マーレに征服された小国の出身で、祖国を独立させたいというのは本当なのか、それともジークの目的さえ達成されれば他のことはどうでも良いのか。
ジークやクサヴァーさんにしても、他国を侵略し、殺戮を繰り返すマーレに対してどうやら不快感を抱いていたから、占領された周辺諸国を解放しようとしていてもおかしくはないんだよね。
反マーレの義勇兵をむざむざ敵に回す必要もないし、始祖の巨人の力でマーレを脅して、諸国を独立させる所までは本当なのかもしれない。
もしそうだとすると、義勇兵がエルディア人に肩入れする理由は無くなるから、ジークの真意を知ってもエルディア側に協力してくれる可能性は低いかなあ。
イェレナの「とうに世界は救われていた」という言葉にピクシス司令が反応したのはややご都合主義的に感じたかな。
義勇兵にとって最も重要な目的はパラディ島を守ることではなく、「マーレの横暴から各国を救う」ことなのだから、別に「世界を救う」という表現を使うのは不自然ではないだろう。
【ジーク】
エレンと握手しなかったのは何でかな。
今回ようやく気付いたんだけど、考えてみればマーレでエレンと接触した際に始祖の力を発現していれば、こんな苦労はしなくて済んだよなあ。
地鳴らしを発動して世界を脅迫しつつ、エルディア人の身体を書き換えて子供を作れなくする。
ついでにパラディ島の面々の記憶を書き換えてしまえばそれで良かったような。
うーん、よほどワインの仕掛けに自信があって、敵地であるマーレではなく、安全が確保しやすいパラディ島で実行したかったのかなあ。
あるいは、エルディア人には自由意志を持たせたままで「余生」を過ごさせたかったのかもしれない。
フリッツ王が壁の中の民の記憶を奪ったことにも嫌悪感があったようだから、なるべく始祖の巨人の力で人々の精神には干渉したくなかったとか。
この辺り、まだまだジークの計画の全貌が見えていないからはっきりしないな。
そもそも、ジークとエレンが死んだ後にどうするつもりなのかもまだ見えてこないしね。
まあ、ジークの代わりにヒストリアに継承させるつもりなんだろうし、始祖の巨人の持ち主も収容区内のエルディア人なら安楽死計画に賛同する人間がいるだろうと、楽観的に考えているのかもしれないが。
【エレン】
要するにこれは、これから子供も含まれる住人への虐殺を行う自分と、グリシャを重ね合わせているということなんだろうな。
「エルディア人が産まれてこなければ~」以降の台詞は丸々ジークを騙す為の嘘で、実際にはエルディア人の未来を守る為に「誰かがやらなければならない事」として受け入れているはずだ。
ただし、「親父は間違っている」「オレも間違いだった」という台詞までは本音が含まれているのかもしれない。
エレンがわざと悪役を被ろうとしているのはもう確定的だから、「オレも間違いだった」というのは、これまでの敵を駆逐することしか頭に無かった己への自虐と取ることができる。
では、「親父は間違っている」という言葉が意味するものは何か。
これはもう、息子に対する態度だろう。
グリシャは配慮の足りない教育方針からジークの裏切りを招き、壁の中に来てからは反省を活かしてエレンに寄り添う姿勢を見えたものの、結局は息子に進撃の巨人を継がせ、寿命を縮める気満々なのは変わらなかった。
翻ってエレンの父親としての姿勢はどうだろう。
彼は我が子と、そしてヒストリアを救う為に今回の計画を実行に移した。
その意味で、自らの志を我が子に継がせようとしたグリシャとは全く違う生き方を選んだことになる。
父の行いに理解を示しながらも、それでも自分は我が子を犠牲にはしない道に進むことを決めた。
グリシャ、ジーク、エレン。
血の繋がったこの三者が、それぞれ異なる志を持つことになったわけである。
エレンの言葉を「腹違いの弟だから」という理由で全く疑いもしないジークが少々哀れではあるが……。