だからお前らは、全てが終わった後も、自分を責めたりしないでくれ。
憎しみの連鎖。
よくあるテーマと言えばそれまでだけど、ブラウスさんの強い生き様にはグッと来るものがあった。
さて、問題のエレンとジーク。
彼らは何をしようとしているんだろう。
112話で(どう見ても)わざとアルミンやミカサを侮辱したところを見るに、自分が憎まれ役となることで彼らを救おうとしているのは間違いないだろうけど、問題は世界からは既に「エルディア王国が宣戦布告した」と見なされていることだよね。
普通なら、「エレンとそのシンパが勝手にやったことです」で済む問題ではない。
となれば、「地鳴らし」の発動は既定事項かな。
つまり、エレンはジークを使って地鳴らしを手に入れた上で、フロック等強硬派共々敢えて兵政権に「倒される」ことにより、「地鳴らし」の力を兵団側に譲り渡そうと画策している、と。
強硬派は一掃され、ハンジ達の目の上のタンコブである憲兵団上層部も丸ごと無垢の巨人に。
さらに、同胞を巨人に変えるというイェーガー派の悪行が喧伝されれば、エレンや強硬派を支持していた国民の熱狂も冷ますことができる。
そうすれば以降はハンジ達が国家の実権を握る形で、「地鳴らし」の圧倒的軍事力を背景にして、各国に対して対話路線で臨むことができる。
一度エルディアが「地鳴らし」を手にしてしまれば、各国はエルディアの要求を呑むしかない。
本来ならば再び世界はエルディア王国に侵略・支配されてもおかしくない状況だ。
にも関わらず、エルディア王国側が対話を求めてきたらどうだろう。
他国への侵略は行わず、エルディア人の解放とパラディ島の独立の保証、国交の樹立程度のものを条件としてくれば。
無論、警戒心が無くなるわけはないが(それで警戒を解くような国はただのバカだろう)、滅亡すら覚悟していた各国にとっては願ってもいない好条件である。
しかも、マーレを襲撃した恐怖のエレン・イェーガーとその一味は、エルディア王国自身が粛清したという。
そして、エレン・イェーガーとは違い、実勢に対話を求めてきている。
「現在の」エルディア政府に対する各国の心情は、必然的に好転するはずだ。
そして、「地鳴り」の脅威がある以上、世界はエルディア王国側の要求を呑み、対等の国家として国交を結ぶ以外に選択肢は無い。
まさに、かつてエレンやアルミンが語っていた「相互理解の為の時間」がここに生まれる。
これこそがエレンの真の目的ではないだろうか。
マーレの襲撃で時間を稼ぎ、地鳴らしの発動可能だと印象付けることで各国に対し優位に立った上で、全ての罪をエレン達が背負うことで対話の機運までも生み出す。
エルディア王国にとってはこれ以上ない戦略である。
では、一方のジーク一党の目的は何なのだろうか。
彼がかつて語った「エレンを救う」。この言葉が嘘だとは思えない。
だが、エレンを救うことは=エルディアを救うこととは限らない。
ジークの真の目的はエルディアの解放とは別の所にある可能性は大いに考えられる。
特に、イェレナが捕虜のマーレ兵の待遇改善を強く訴えたという点。
私はこの話から、ジークとイェレナは反マーレ派などではなく、むしろマーレの為に始祖の巨人を手にしようとしているのではないか、とすら考えた。
無能なマーレ軍上層部を排除し、マーレ弱体化を座視してきたタイバー家を滅亡させる。
これは長期的に見ればマーレの為になる行動とも言えるからだ。
おまけにパラディ島という共通の敵を作り出すことで、マーレに対する国際社会の反感を逸らすことができる。
また、エルディア人から距離を置いているグリーズが、エルディア解放を訴えるジークやイェレナに協力しているのも妙な話だ。
ジークの忠誠心が未だマーレにあることを聞かされているからこそ、マーレ人であるグリーズが協力していると考えれば筋は通ってくる。
だが、しかし。
112話でのエレンの偽悪的な振る舞いから、私は上記の可能性は無いだろうと結論付けた。
「自らに憎悪を集めることで仲間達を救う」という手段は、ジークが実はマーレの為に行動していた場合、効果を発揮しないからだ。
エルディアを滅ぼさんとするジークを仲間達と共に止めようとするだろう。
エレンが今のような計画に打って出たのは、ジークにエルディア人(パラディ島)そのものを滅ぼそうとするような意図はないという確信があってこそのはずだ。
メタ的に考えても、私はエレンの判断を信用したい。
グリーズの行動も単に「勝ち馬に乗った」とすれば不自然ではない。
自分たち捕虜に横柄な振る舞いをする憲兵上層部よりも、反マーレ勢力とはいえ捕虜の待遇保障を訴えてくれたイェレナを選ぶのは、彼の立場からすれば当然の話だ。
まとめると、ジークの目的は「地鳴らしをカードとしたエレンと自分が支配するエルディア帝国の復活」。
対するエレンの目的は、「ジークの計画を利用し、エルディア王国と世界の対話の機会を作り出す」こと。
最終的にエレンは人類の敵の汚名を着たまま、自らを他の人間に食わせ、地鳴らしの発動権である始祖の巨人やその他の巨人の力を兵団に明け渡すつもりだろう(始祖の巨人の力とフリッツ王家の血さえあれば、エルディア王国側はジークの死後も、いつでも発動をチラつかせることができる)。
目的の相違のみならず、弟を救いたいと願っているジークにとって、これは絶対に許容できないはずだ。
かつて諌山先生はジークのことを「エレンが間違った道を選んでしまった姿」という趣旨の表現をしていたと記憶しているが、やはり最後はエレンとジークの決闘で物語は幕を閉じるものと考えられる。