面白かったけど、ラストもうちょいどうにかならんかった?
※以下、ネタバレ注意
現代のアメリカに蔓延る性犯罪や警察の腐敗を告発した社会派映画だと思っていたのでびっくりしましたね。
実際には人格的に問題だらけの人間達を、厳しくも温かい目で描いたヒューマンドラマというやつだった。
冒頭で粗暴な警官をいきなり登場させることで、何かしらの不正があって強姦殺人事件の捜査が進んでおらず、その不正を暴き立てるのだろうと思い込まされる。
しかし、徐々に主人公こそが無茶な要求をしていることに気付き、彼女の身勝手な言動に嫌悪感を抱き始める。
けれども、彼女の境遇と、怒りと、悲しみ、その苦悩を見せられることで、再び彼女を憐れむようになり、最後にはディクソン巡査への印象の変化と結ばれていく。
ただ弱者に寄り添う、といった内容ではなく、「世間的にはクズだとされる人々を、人間として描こう」という試みなのだろう。
「被害者遺族の立場を笠に着て横暴な振る舞いをする母親」「南部の田舎の警察署長」「差別主義者の暴力警官」「主人公から旦那を寝取った未成年の女」
こういった普段は悪役として描かれがちな人々に焦点を当てたのは新鮮である。
主人公もなあ。うむ。
署長への態度は決して褒められたものではないというか、人々から憎まれて当然なものだったけど、例えば家に訪ねて来た神父や、教会に集まる信者達はきっと「娘の件で味方だった」訳ではないんだろうね。
娘の見た目や言動は「アバズレ」そのもので、町の人間からは「あんな格好で夜中で歩いてればレイプされて当然」という類の陰口も叩かれていたはずだ。
神父の存在と、「同情し難いレイプの被害者像」をあえて描くことで、そこから主人公一家が受けた苦しみを想像させるのは非常に上手かった。
その上で、大きな恩すらある小人症の男への冷たい態度など、主人公が善人でもなんでもなく、クソババアはクソババアなんだと強調し続けたのは、「可哀想な人間」を描きたいわけじゃないんだ! という意志が感じられた。
まさかの自殺に度肝を抜かれた署長が最期に意趣返しをしていくところも、キャラクターとして魅力的になっていたと思う(単なる恨みからだけではなくて、これで捜査が進めばという気持ちも本心だったんだろうし)。
ラストの強姦魔処刑人コンビ結成はちょっとぶっ飛びすぎてて気持ちがついていかなかったのが正直な感想ではあるものの、重めのテーマながら所々で茶目っ気もあって沈鬱にならずに見られるし、とても楽しめた作品でした。