2話よりは楽しめたかなあ。
とりあえず、アツメちゃんが可愛かった。
逆転裁判5 第2話『逆転の百鬼夜行』感想はこちら
※以下、ネタバレ注意
途中、引っかかるところは多かったのだけど、それでもクリア後の感想は2話比べればだいぶ良かった。
2話で一番悪かったのは、真犯人を証言台に引きずり出した後に、天魔市長のカウンセリングに入ってしまったことだと思う。
あれで完全に勢いが削がれてしまった。
3話ではそれはなかった(ズッコケ3人組がココネを励ます件は正直クサいとは感じたものの、許容範囲ではある)ので、引っかかりを覚えつつも、ひとまず敵を打ち倒す満足感は得られた。
【一路 真二】
最初に登場したときからいかにも怪しい。
ライターの意図としては、彼が真犯人だということは終盤まで伏せておいたつもりなのだろうけど、はっきり言って最初から最後までこいつのことを疑っていたので全く意外性も驚きもなかった。
まず、見た目が胡散臭いし、その主張も「勝利のためならば手段を選ばない」という「作中非」とも言えるものであって、それだけでいかにもな真犯人っぽさを感じてしまった。
厚井知潮や静矢零を犯人だとミスリードしたいのなら、もう少しイチロのキャラデザや言動を疑われないように抑えるべきだったんじゃないかなあ。
途中までレイを犯人だと思わせる話運びはそれなりに上手く行っていたと思うので、一層残念だ。
これでイチロがあからさまに怪しいキャラでさえなければ、こっちも騙されていたかもしれないのに。
当初は「(無実の)依頼人を守るための捏造は是か非か」という「思想の対決」を匂わせていたのに、結局、イチロが依頼人を守る気もない、ただの私利私欲で動く小悪党で終わったのは、ズルい気がするなあ。
「手段」の問題を提起しておきながら、イチロをただの悪党にしてウヤムヤにしてしまっていて、こんなことなら最初から「依頼人を守るために手段を選ばないことは許されるのか」といった難しいことに触れなければ良かったのに。
答えを出すのは困難な問題なのは確かだと思うけど、だからこそ、それに触れてきたときは期待させられたわけで、こんな風に逃げるのであれば最初からやらないでほしい。
追い詰められたイチロは哲学者からスパンルタンのような風貌に変身したけれど、覚醒前の方が凄みがあったなあ。
ああいう乱暴な言動に変貌されると逆に小物感を感じてしまうから、変身前の平然とした表情で追い詰められていく方が犯人としてのキャラは立ったんじゃないだろうか。
それと、最後のブレイクモーションだが、2話でも同じことを思ったのだけど、ちょっと冗長に過ぎると思う。
これまでの逆転裁判シリーズでは、真犯人が最後に壊れるときには(クオリティに違いはあっても)圧倒的なスピード感とインパクトがあった。
それが5になり、美葉院は時間をかけて顔にスプレーをするわ、イチロも長々と板書をしてブーイングを浴びるわと、尺を使い過ぎてテンポが損なわれているように感じた。
【ココロスコープ】
1話や2話の感想では、ココロスコープのシステムが被告人や弁護側証人の混乱を解くために使われていることを褒めたのだけど、3話にして「みぬく」と同様に「証人が嘘を吐いている根拠」に使われるようになっていてガックリきた。
前も書いたように、「みぬく」を探偵パートで使うようにしたのは英断だと思うけど、新システムで同じ強引な決め付けを行っていたら全く意味がないんだよなあ……。
もちろん、「みぬく」がオドロキ君とみぬきちゃんにしか分からないことだったのに対して、ココロスコープは映像化されていてココネ以外の人物にも見られるものではあるんだけど、ココロスコープの機械が裁判に於いて証拠となるのかどうか語られてないから、これを根拠に証言を嘘と決めつけるのは明らかにおかしい。
にも関わらず、ユガミ検事も裁判長も突っ込んでこないから、結局は「みぬく」と同じくプレイヤーが納得できない「証言の嘘の根拠」になってしまっている。
まだ3話の段階ではあるものの、このココロスコープのシステムは「みぬく」と同じく大失敗と断ぜざるを得ないだろう。
ただ、終盤のレイに対するココロスコープの使い方は良かったと思う。
作中の扱い的にもカウンセリングとして納得できるくらいレイの精神は不安定になっていたし、その間、ユガミ検事が席を外していたことも上手かった。
これまでココロスコープの間はユガミが空気と化すことが不満だったので、いっそ「法廷からいなくなる」というのは良い解決法だった。
こういう形で使われるのならば文句はないのだけど、どうも新システムと法廷の兼ね合いが検討不足だったんじゃないかなあ。
【静矢零と厚井知潮】
はっきり言って、この2人とシノブの友情は描写不足であまり心に響かなかった。
どちらも秘密を抱えていて、レイはシノブにもそれを隠していたし、チシオの秘密をシノブが知っていたのかどうかも明確に描かれないしで、終始仲が良いという印象は得られないままだった。
せめてチシオの秘密に関しては、留置所でココネから話を向けるなどしてシノブがどう受け止めていたのかを語らせるべきだっただろう。
そのせいで、終盤訪れる3人の友情確認の場面も感動とは程遠くなってしまった。
キャラの秘密を設定するのも結構だが、友情をテーマにするのであれば、もっと3人の掛け合いが見られるようなシナリオにすべきだったと思う。
個々のキャラでは、レイに関してはかなり良かった。
いけすかないクールキャラからの天然っぷり、可哀想な子への落差はキャラを立たせるに十分だったし、ここまでの逆転裁判5で一番好感の持てるキャラだった。
逆に、チシオの変貌はいまいち。
熱血キャラと婦人口調とのギャップが激しすぎて情緒不安定にしか思えないし、男だと思わされていたところから、いきなりあんなコテコテの婦人口調にされると、オカマのように見えてしまう。
はっきり言って気持ち悪さを感じるキャラであり、どこまでが本心なのかよく分からないままだったから、それが余計にシノブとの友情に水を差していた。
「実は女だった」というパターンでこんなに嬉しくないのは嘘喰いのタカさん以来だ。
【テープの声】
一番引っかかったのは、チシオが女だと分かったことで、「テープに録音されていた声は女のものだが、これでシノブだけが容疑者ではなくなった」という主張。
いやいやいや、ちょっと待て。チシオが女だと分かったからといって、別にそれまでのチシオの声が極端に変わるわけではないだろう。
チシオのことを男だと思っていた間、「テープの声はチシオの声とは似ても似つかない」と感じていたのならば、それはチシオが女だと分かったところで同じことだし、逆に「テープの声がチシオの声だとしてもおかしくはない」のならば、チシオが男を装っている段階で疑われるべきことであり、女だと判明した途端、「テープの声はチシオの可能性もある」とするのは全く意味不明だ。
こんなことはちょっと内容を検討すればすぐに分かる矛盾であって、厳しい言い方をすれば、この時点で逆転裁判5のシナリオはきちんと推敲されていないと断定できる。
一体どのような製作環境だったのかは知る由もないし知りたくもないが、「逆転裁判」という名作の続編を手掛ける以上、もう少しテキストに力を入れてほしかった。
【ユガミ検事】
今話では終盤で弁護側に味方するような言動に変わったユガミ検事。
逆転裁判無印の御剣を思い出す……、と言いたいところだが、ミツルギと違いその心情が全く読み取れないので、ただただ戸惑うしかなかった。
これも2話の感想で書いたが、そもそもユガミ検事が何を目的としてこれ程強引に被告人を有罪にしたがっているのかが描かれていないから、今回の心変わりも単に「唐突」としか思えなかった。
御剣の場合、2話の時点で「犯罪者を憎んでいるから、全ての被告人を有罪にする」という信条が語られ、だからこそ一度敗北した後の3話において「真犯人が誰か御剣にも分かった」ことで弁護側に協力するという、彼の変心が素直に受け止められたのだ。
それに比べ、ユガミ検事は圧倒的に描写不足と言うしかない。はっきり言ってキャラが立ってない。
ココネとの関係性が匂わされてはいる(ココネが助けたい人物がユガミ?)ものの、それだけでは「無理やり被告人を有罪にする→弁護側に協力的になる」という変化の説明にはなっていない。
次の話のために設定を引っ張るのも結構だが、最低限1話1話を楽しめる程度にはキャラの中身を深めてほしい。
【不自然な点】
これだけボロクソに言っておいてまだ文句をつけるのかと思われるかもしれないが、この話で感じたその他のおかしな点をまとめておく。
・ナルホド君が4の1話で思いっきり証拠を捏造していたのが無かったことになっているような。
まあ、あれはクソ設定だと思うので、無かったことにされてるとしても何の文句もない。むしろ褒め称えたい。
・レイが死体をスルーしたことへのココネ達の反応が薄すぎる。おかしいだろ、それは。
もっとレイを責めたり、なぜスルーしたのか深く突っ込むべき。
・この不自然さを、「レイというキャラが異常だから」で済ませるのは逆転裁判ではよくあることとはいえ、その場合ナルホド君が常識的なツッコミを入れて、その結果、相手の異常性が浮き立つという構図になっていた。
・ところが、5だと主人公側のツッコミが不十分だから、ただモヤモヤする結果に終わってしまっている。「このやり取りは不自然ではないか」と誰か気づかなかったのだろうか。
・「前科がつくと学園を卒業できない」ということがやたらと強調されていたが、殺人罪で有罪になった時点で校則とか関係なく法律家にはなれないだろう。
・そこを強調するのなら、例えば「被告人に着せられた殺人罪は無罪にできそうだが、その代わり被告人の友人が万引きなどの軽犯罪を犯したことになってしまう」といった構図にすべきであって、殺人罪で裁かれている状況で「校則」を持ち出されても、プレイヤーは全く感情移入できない。
・「台本が不採用になった」という初めて聞く情報を検察側が持ち出してきたのに全く驚かないココネちゃん。
普通、そこは「シノブ、何で話してくれなかったの……?」だとか、「シノブはそんなことは言っていなかった、だとしたらこの証言は嘘に違いない」だとか、そういった反応を見せるべきだろう。
・「コラ、シヅヤレ」
いやいやいや……。あまりにも無理やり過ぎるだろう。
たたでさえ無理やりなのだが、この展開になった当初はスタッフへの信頼が地に落ちていたこともあり、「本気でこれが真相の可能性もあると主張している」のだと誤解し、絶望的な気分に陥っていた。
それにしても全く語感も似ていないし、強引なのにも限度があると思う。これで裁判長を説得できても、こっちは全然納得できない。
・シノブの「布がかけられてたから像は完成していたはず」という証言に突っ込まないのは駄目すぎるだろう……。
・そもそも、いくら像を作るのに時間がかかると言っても、はっきりと時間が分かっているわけではないのに、「ステージからすぐ近くの校舎の3階を往復するのは無理」という根拠にするのは無理がある。
・旗を袋状に結んで死体を入れておいたのに、旗を美術室からステージに降ろすだけで死体が都合よくステージに落ちると考えるのは意味不明。
そのまま結んだ旗の中に留まっていたらお終いだろう。
・血が染み込んだガリューウェーブの旗を美術室にまで運んで、その旗で美術室の床に血液を塗りたくったらしいが、そんなに塗り込める量の血液を含んでいたら、美術室に運ぶまでの間に色々なところに滴るんじゃないの……。
・最後の最後にコメディちっくにココネが色々な像のポーズをとる件はBGM含めて緊張感を損なっていた。
・槍が刺さっていた傷を、矢をムリヤリ刺したからと誤解するのは無理があり過ぎるんじゃ……。
明らかに傷穴の大きさが違うだろう。
まあでも、逆裁の警察の無能さを考えるとこれは仕方ないか。
・レイの告白を避けたくてシノブは台本を検察側に有利に変えようとまでしたのに、実はレイに恋愛感情などなかったことが明かされたときの反応が薄すぎると思う。
どうも、こういった細かいやり取りを淡泊に感じちゃうんだよなあ。
【最大の矛盾】
最終盤、イチロを追い詰めるときに「実はナルホド像は完成していなくて、そこに死体を隠していた」という論証が行われるわけだけど、そもそも、なぜそんな証明をせねばならなかったというと、「イチロが美術室に死体を運ぶ暇がなかった」ということが前提にあったからだった。
ところが、「イチロが死体を美術室(やステージ以外のどこか)に隠すことができなかった」という根拠は、実は一切提示されていない。
この前にシノブによって「8時(8時半?)には既に像が完成していた」という証言はあったものの、その後、イチロが校内に残っていなかったという証拠は何もないのだ。
つまり、ステージで被害者を殺害し、シノブが帰宅した後に、死体を美術室へ運んだ可能性は普通に考えられる。
にも関わらず、『なぜか』作中ではその可能性は無いこととされ、『なぜか』、「ステージのどこに死体を隠したか」という話に強制的にもっていかれてしまった。
はっきり言って意味不明である。
それだけでなく、「布がかけられていたからといってナルホド像が完成していたとは限らない」となれば、その前段階の「殺害現場は美術室ではなくステージだった」という前提すら無くなる。
すなわち、イチロの「像を完成させるために美術室に行く余裕はなかった」というアリバイは崩れ去り、再び「殺害現場が美術室だった」可能性も出てくるというのに、そこは完全に無視されている。
支離滅裂、論理破綻と言っていいだろう。
繰り返しになるが、どうもこの作品はこれまでの逆転裁判シリーズと比べて不自然な点が多い。
もちろん、歴代シリーズでも不自然な点は多々あったが、これ程ではなかったし、ギャグとして昇華することによって、「ライターも分かっていて敢えて強行突破したんだな」と感じさせられるようなものが多かった。
ところが、逆転裁判5の場合は、ギャグでもなく、スタッフ自身が気づいていないとしか思えない矛盾点や奇妙な点があまりにも目立つ。
調べたところ、今作ではシリーズで初めて複数ライター制が取られたようだが、これが悪い方向に作用してしまっているのではないだろうか。
無印の発売当初から長年追いかけているシリーズなだけに、あまり悪くは言いたくないのだが、これだけ粗が多いとさすがに「可愛さ余って憎さ百倍」となってしまう。
4話から核心と言える事件に入っていきそうな様子だし、最後にあっと言わせて、ここまでの不満など吹き飛ばしてほしい。