BLOOD-C 第3話 「ひとはいさ」
このアニメの楽しみ方がようやく分かってきた気がします。
視聴前、このアニメについて、「日常を壊され非日常に叩き込まれた沙夜が、やむを得ず戦うようになる」話だと勝手に思っていました。
ところが実際は、沙夜は本編開始前から戦い続けていて、最初から非日常の住人でした。
なので1話を見たとき、「日常→非日常」のお約束でなかったことに少し驚きを感じました。
しかし、そうではなかったようです。
沙夜にとっては、学校に行くことも、カフェに毎日通うことも、神社のお手伝いをすることも、そして「古きもの」と戦うことも、全てが「日常」だったんですね。
古きものとの戦いが「日常」でないのは、私たちの価値観からすればの話であって、彼女にとっては戦いもまた日常の一つに過ぎないということを、3話にしてようやく認識できました。
3話には、それらの日常を乱す、不吉な気配がいくつかありました。
それを見て、この作品の前半は沙夜の「日常」が壊されていくことがメインになるのではないかと感じたのです。
ラストの語り(どうやらこの語りの主は、やはり文人のようですね)の「人が、根本が、変わったら」という言葉も、それを表しているのではないかと思います。
つまり、今の「ただ、現れた古きものを討ち滅ぼす」という沙夜にとっての「日常の戦いの形」すらも変貌した時こそが、彼女が日常から非日常へと突き落とされる時なのではないでしょうか。
何の変哲もなく、ゆるい、悪く言えばダラダラした、正真正銘の『日常シーン』にこれほど長く尺を取っているのは、それが壊れ、失われていく様を効果的に見せる為なのではないかと疑い始めています。
この予感が正しければこれからの話は、沙夜の友人達やギモーブも、父様との関係も、古きものとの戦いも、次第に変貌していくストーリーになっていくのではないでしょうか。
怖くもあり、楽しみでもあります。
2話ではかなり落ちていた視聴のモチベーションも、今回で一気に上がりました。
【先生】
教師になる前は、何かの研究をしていたというセクシー先生。
今、教えている科学ではない別のものの研究だったそうですが、具体的な内容は語られませんでした。
この作品の内容から考えると、民俗学とかの類でしょうか? 妖怪=民俗学という勝手なイメージですけども。
この町になぜか頻出する古きものを研究する為に、やってきた、とか。
「今の職でないと知れないこと」というのも気になりますね。
普通に考えれば、生徒との交流や教える楽しさ、ということになると思うのですが……。
穿った見方をするとすれば、古きものに関係した何らかの力を有している沙夜に接近する為に教師になった、という想像はできますね。
何にせよ、ただの先生で終わる人ではなさそうで、非常に怪しい臭いを放ち出しました。
【沙夜の日常】
TVを見ないというのには驚きましたね。おそらく新聞も読んでなさそうです。
そうすると、彼女にとっては、本当にこの町で起こること、過ごす日々だけが「現実」ということになります。
彼女はこの町を「静かで良いところ」と言っています。彼女にとっては、この町こそがアイデンティティの根幹であり、変化などいらないのでしょうね。
2話で「この町を、人々を守る」ということを言っていたように、だからこそ沙夜は、この町の静けさを破ろうとする古きものと戦うのでしょう。
古きものとの戦いそのものもまた、彼女のアイデンティティであると思いますが。
この変わらないない町、ただ過ぎていく日常が変貌したとき、沙夜のアイデンティティはどのように揺らぎ、彼女はどう変化してしまうのか。
マスターが語りで言っていた「根本」とはそのことかもしれません。
【古きもの】
八卦に表れない、今までとは違う古きもの。
これもまた、変化の兆しでしょう。
しかし、八卦に表れなかったとしたら、では、唯芳はどうやって古きものが現れることを知ったのでしょうか。
八卦以外に、唯芳は古きものを感知する手段を持っているのかな。
あるいは、八卦に表れなかったのは、うぐいすパンの店主への古きものの干渉だけで、その後の出現は八卦に表れたとか?
てっきり、うぐいすパンの店主が「古きもの」に変貌するのかと思いましたが、操られエサとして誘き寄せられただけでしたね。
では、その前の晩から今まではどこにいたんだよ、という疑問はありますが。
それに、店主に暗示なりなんなりをかけたのなら、なぜその場で食わなかったのでしょう。
八卦に表れないようにする為、とかでしょうか。
顕現はせず暗示だけかけてエサを誘き寄せ、自分のねぐらまで来させてから顕現して、唯芳や沙夜に勘づかれるリスクを抑えようとした、とか。
まあ、これはもう少し古きものについての情報が出ないと何とも言えないですね。
さて、このデカいだけで大して強くなかった電車型古きもの(なぜわざわざ電車の姿になっていたんだ。やっぱガンツが浮かぶ)、その姿形もあって、喋り出すとは欠片も思っていませんでした。
1話の地蔵や2話のビオランテも喋れたのか、それともこの電車が特別なのか。
気になるのはその台詞。
あまりよく聞き取れなかったのですが、「ぬし、約定を守れ」と聞こえました。
『約定』とは何か。
誰かと古きものが何らかの約定を結んだのでしょうが、一体それは誰か。
沙夜の先祖? あるいは沙夜の母親?
約定の内容を妄想するとすれば、最初に浮かぶのは「生け贄」ですね。
この町の人間から生け贄を捧げる代わりに、無闇に人を食わないという約定を、更衣家は古きものと結んでいた。それがいつの頃からか忘れられ、今では常に戦う関係にある、みたいなことはいかにもありそうな展開です。
実際はそう単純な話ではないでしょうが。
ただの怪物でしかなかった古きものが、人の言葉を話したことで、さらに謎めいた存在となりました。
【時真慎一郎】
沙夜はやたらと彼のことを気に掛けますね。
他にもクラスメイトはいるのに、時真のことをカフェに誘ったりとか。
予告でもお弁当を食べさせようとしていましたし。
少なくとも今のところは恋愛感情というわけではなさそうですし、沙夜が彼のことを特別に気にする事情が何かありそうです。
さて、今週は「先生の怪しげな言動」と「八卦に表れず人語を話す古きもの」、主にこの2つが、日常を変えかねない気配を漂わせていました。
新たな展開への布石、という言い方もできますね。
気になる謎も提示され、ようやくこのアニメに引き込まれてきました。
次週が楽しみです。