ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

映画『ダウト〜あるカトリック学校で〜』感想

この手の映画は感想が難しいです。

以下ネタバレ注意

面白い。

実に面白かったです。

しかし、どう感想を書いたものか。

個人的には、物語の展開の中でほとんどシスター・アロイシアス(校長)に感情移入しながら見ました。

それは、カトリックなどの学校に限らず、教員というものは生徒を厳しく律するべきだという考えが僕にあり、そして、そうやって自分が嫌われること承知で生徒を指導できる教諭が(日本で)少なくなっていることを、経験の中で感じているからです。

なので、生徒に対して、自分が嫌われること承知で(むしろ、そうあるべきと考えて)厳しく、かつ冷静な態度で指導するシスター・アロイシアスのことを、感情移入と言うよりも、尊敬の念で物語序盤から見始めました。

まあ、僕が実際のあの学校の生徒だったらシスター・アロイシアスのことは大嫌いになっているでしょうけどね。子供とはそういうものですから。

さて、しかしながら、フリン神父の言うことも理解できます。

シスター・アロイシアスは証拠も何もなしに、感情的にフリン神父を犯人だと決めつけ、執拗に責め立てているわけですからね。

映画の描写からして、僕もフリン神父は「黒」だと感じながら見ていましたが、やはり法治国家に住む人間としては、シスターのあの態度はいただけませんでしたね。

最終的には、神父がシスターのカマ掛けにまんまと引っかかって、学校から去ったような形になりましたが(しかし、シスターを納得させることは不可能だと断じて、これ以上の面倒を避ける為、無実であるにも関わらず、あえて消極的に罪を認めたようにも見えますが。これもスタッフが意図的にやった描写でしょうか)、証拠もないのに決めつけるシスターの姿には感情移入できませんでした。まさに宗教的という印象です。

宗教を一途に信じ込んだ、自身の直感こそが全てという人でしたね。

神父とシスターの口論のシーン、シスター・アロイシアスが前の教会のシスターに電話したという話を聞いてから、フリン神父が弱腰になるまでは、どちらが「黒」か視聴者には分からないようにしていたのかな。

自分の場合は最初から神父を黒だと決めつけながら見ていましたが。

こういった、何というか中立的な視点の物語は非常に面白いですね。

リベラルな神父と、保守的なシスター、どちらにも肩入れせず、問題点を描き出そうとしているように感じます。

ただ、一方で、こういった中立的な視点の物語というのは、自分の主張を明確に示さない、ある意味では逃げなのかなあ、という気もしないではありませんが。

ラストのシスターの「疑いが。言い様のない疑いが・・・」という言葉もグッと胸にきました。

規律を他者に守らせる為に、他者への疑いを常に消せずにいる。

キリスト教には詳しくないですが(正確にはキリスト教にも)、宗教者として疑いは罪深いことなのでしょうね。

まあ、しかし、シスター・アロイシアスもちょっとミラーに冷たすぎる気はしましたけどね。

もう少し気に掛けてやるべきでしたし、フリン神父が去る時にはフォローしてあげるべきでした。

作中でも言及されていたように、それはフリン神父が優れていたところなのでしょう。そこに邪な感情はあったのかもしれませんが。

シスター・アロイシアスも目が見えないシスターに慈悲の心を持っていたので、そういう気遣いの無い人間ではないのでしょうが、なぜミラーには冷たかったのか。

同性愛者となったミラーへの軽蔑の念があったのかもしれません。あるいは、底に抑えてはいても、黒人への差別感情がそうさせたのでしょうか。

それらを含めての「言い様のない疑いが・・・」という台詞だったのかな。

しかし、タバコを吸うとか、砂糖をコーヒーに入れるとか、夕食で酒を飲んで他人の悪口をネタに喋り散らすといった神父の所行がキリスト教的に見て、どの程度「自由すぎる」行いなのか、そういったニュアンスが欧米の人間でない自分には分からないのは残念ですね。

きっと現地の視聴者はもっと深く感じられる部分だったのでしょうから。

特に、神父達とシスター達の対照的な夕食のシーンはとても印象的でした。

あと、ケネディやF・ルーズベルトってやはりアメリカ人にとっては最高の大統領扱いなんですね。

ケネディは分かりませんけど、日本人からすると人種差別的なルーズベルトはとても良いとは思えませんが。

ニューディール政策による財政出動も、野党やマスコミに屈し途中で止めたせいで、再びアメリカを恐慌状態に陥れ、戦争になるまで景気は回復しませんでしたし。

まあそれはルーズベルトだけのせいではないですけど。

余談ですが、シスター・ジェイムズが非常に可愛かったです。顔というかキャラクターが。

映画の登場人物をこんなに可愛いと思ったのは久しぶりかも。めっちゃ可愛かった。

10点満点中9点。

良い映画でした。