76巻を読み返して思いついたので。
※以下、ネタバレ注意
「深層海流」という二つ名を持つ海運王ウミット。
ビッグマムのお茶会に招かれる闇社会の帝王の一人であるからには、密輸などの犯罪にも関わっていると思われるが、ひっそりと裏稼業だけを生業としているのなら「海運王」とまで呼ばれはしないはずだ。
おそらくは、正規の海運業でも市場を独占しており、その傍ら法に触れる商売にも手を出しているのだろう。
では、なぜ世界政府はそんな悪徳商人のウミットを放置しているのだろうか。
この疑問に関しては、76巻でのグラディウスによる「白い町」フレバンスの解説がヒントになりそうだ。
グラディウスによると、フレバンスから産出される珀鉛を運ぶ運輸業に、世界政府が参入していたらしい。
世界政府が運輸業に手を出しているのなら、商売敵となる民間の業者が「海運王」と呼ばれるまでに市場を握っている状況を放置するはずがない。
つまり、ウミットと世界政府には密接な関係があるということになる。
おそらくは、それまで世界政府が直接経営を手掛けていた海運業を、ウミットに委任したのではないだろうか。
「民営化」された海運企業を商才のあるウミットに経営させることで収益を伸ばし、その何割かを世界政府に納めさせる。
いわゆる政商である。
後ろ暗い商売に手を出しているのを知りながらも、その分は上納金に上乗せさせることで黙認する。
珀鉛の害毒を知りながら、金のためにそれを隠蔽し、ついには国まで滅ぼした世界政府ならば十分考えられる話であろう。
このことを踏まえると、ウミットがビッグマムの贈り物として「北の最果て」の物品を選んだことは興味深い。
「北の最果て」とは、天竜人を辞めたドンキホーテ一家が流された世界政府非加盟国のことである。
16年前にフレバンスが滅ぶまでは珀鉛の取引は行われていた。
海運王であるウミットも底なしの金を生む珀鉛の運輸に関わっていたはずだ。だとすれば、ノースブルーはウミットにとっても縁深い地域ということになる。
ここで彼に「北の最果て」という台詞を言わせたのは、尾田先生の意図的なものだろう。