「Dの一族」は〝D〟だが、D=Dの一族ではないってこと。
第1171話『鉄雷』にてイム様が「『エルバフ』は〝D〟」であると発言した。
しかしながら、エルバフにDの名を冠する者は今のところ登場していない。
これだけなら「そもそもエルバフの巨人族は姓が全員不明であり、これはDの一族であることを隠すためだ」とも解釈可能である。
だが、Dの一族と関係が深いはずのジョイボーイについて、エルバフで全く伝わっていないのは、いくらなんでもさすがに不自然だ。
人間族よりも遥かに寿命が長く、世界政府の干渉すら排していたエルバフがジョイボーイと深い繋がりを持っていたのなら、現代まで多少なりともジョイボーイの名が残っているはずであろう。
だが、エルバフにはジョイボーイの能力である「ニカ」についての伝承しか残されていない。
800年前に世界樹に描かれた壁画についての情報すら伝わっていない始末だ。
エルバフとジョイボーイにはほとんど関係性が無かったと理解するしかあるまい。
そも、「Dの一族」とは何か?
私はこれを「ジョイボーイの同志達の符号」だと考えている。
即ち、800年前にジョイボーイの思想に共感し、協力した者達が、自身の姓名の間に〝D〟の隠し名を加えたのが、現代まで続く「Dの一族」の始まりなのだろう。
最も顕著なのがネフェルタリ・〝D〟・リリィ女王だ。
ネフェルタリ家はそもそも900年前からおよそ100年もの間、他の19ヶ国と共に連合国を組んでジョイボーイの祖国と対立し続けてきた。
ネフェルタリ家そのものが「Dの一族」だったとは考え難い。
800年前の女王だったリリィが、敵対していたはずのジョイボーイに共鳴して密かにその一味となり、〝D〟を名乗りだしたというのが真相だろう。
イム様によると、近年〝D〟の名を持つ(が、その意味は知らない)「抜け殻」が各地に湧き出しているのもリリィ女王のミスに起因するという。
エルバフの国家そのものがリリィ女王の「ミス」で丸々生き延びたはずもない。
これはおそらく、リリィ女王が意図的にポーネグリフという希望を解放したことによって、ジョイボーイの同志達がその意志を〝D〟の名に託して後世へと繋いだのだと思われる。
「Dの一族」の名に挟まっている〝D〟とは要するに、麦わらの一味における「仲間の印」のようなものなのである。
それでは、そもそも〝D〟とは何か。
つまるところこれは、何らかの「思想」を指す隠語なのだろう。
第二世界に生きたジョイボーイと彼の同志達は〝D〟と呼ばれる思想を奉じ、実現しようとした。
一方、イム様が属した「連合国」はその〝D〟の思想に反対し、その信奉者たるジョイボーイの一団に対抗した、というわけである。
即ち、〝D〟とは第一世界で勃興し、第二世界にてその実現を目指す運動が起きた、ある種のイデオロギーであり、エルバフは第一世界においてその思想を支持する勢力の一角だったと考えられる。
ところが、第一世界の滅亡を経た第二世界でのエルバフは〝D〟を推進するジョイボーイ達には加担せず、蚊帳の外の立場を保った。
それ故、他国と同様に空白の100年で大地の大半を喪失した現代におけるエルバフでは、〝D〟の思想それ自体は伝わっていないのだろう。