私はファントム株を買うぜ。
【ファントムは駄目な奴?】
最新話『カポックの女王 02』にて、ドローネだけでなくファントムのワイトも一兵も残っていないことが判明した。
となると、殺技軍団の「古参」達こそ、ファントムが大惨事以前から所有していたワイト部隊であったのは、ほぼ間違いないだろう。
即ち、ファントムは精鋭ワイト達をドロクロドに籠絡され、丸ごと奪われたことになるから、デカトンの言っていた通り、ファントムは思いのほか駄目なレイスだったのだと捉えていたのだが、改めて考えると、これは少し違う気がしてきた。
【ワイトの外見】
殺技軍団の古参であるカルシウムやヂヨ達は、大惨事の時点で現在と同様の姿かたちをしていた。
これは他のレイスのワイトとは大きく違う点だ。
デュラハンの死忍隊・死翔隊も、デカトンの重装甲部隊も、ドローネの死槍隊も、所属するワイトは同じ意匠の外見をしていたからだ。
一方、ファントムの精鋭ワイトと考えられる殺技の「古参」達はてんでバラバラな見た目をしている。
デカトンは殺技軍団の統一感の無さを嫌悪していたが、これはドロクロドが総司令を務める軍団となってからのことではなく、ファントム軍全体の傾向だったのかもしれない。
つまり、他のレイスのようにワイトを秩序だった部隊に仕上げるのではなく、飲血躰化させた後もある程度の自由を与えていたわけだ。
【たましいの自由意志】
何故そんな方針を採ったのか?
一つしか考えられまい。
ファントムはおそらく、レイスの中で「たましい」の自由意志の力を最も重視していたのだ。
自身に忠実な統一された部隊にすれば戦術的な強さは得られるが、レイスの胎界に取り込まれていき、せっかく胎界主だったワイト達の「たましい」の力は失われていく。
彼はそれを良しとせず、あくまでワイトを胎界主として「たましい」の力を伸ばす方向に舵を切ったのだ。
第2部最終話で急に殺技軍団の「古参」達が能力バトルかのように「たましい」の力による異能を使っていたのは、テコ入れや唐突な路線変更ではなく、『主』たるファントムの方針で胎界主としての力を自由に深め続けていたからだとすれば筋は通る。
【デカトンとの不仲】
デカトンとの対立も、これが一つの原因だったのかもしれない。
彼はレイスとしての尊厳に絶対の拘りを持っていた。
ワイト如きが勝手気ままに振舞い、主たるレイスに敬意を持たない状況を静観するファントムの方針を到底許してはおけまい。
レイスという種族全体の誇りを傷つける行為だとして、ファントムにしつこく絡んでいった結果、決定的に嫌われたのだとしても不思議ではない。
【ファントム株】
殺技軍団が制御不能になったのではなく、ファントムには最初から制御するつもりがなく、ドロクロドがいずれ裏切るであろうことも織り込み済みで血をバラまいたのだとしたら、彼の評価はまた変わってきそうだ。
最終的には撤退に追い込まれたとはいえ、阿州を未だ人類が踏み込めない暗黒大陸へと変貌させるなど、ソロモンヘイムに最も打撃を与えたのはファントム・ドローネ連合軍だった。
ソロモンヘイム攻略において、ファントムの選択は効果的だったと言える。
更に、司神オシリス=ハデスの帰還によって撤退したのも死の神獣の中ではファントム・ドローネが最も早かった(あのデュラハンですら引き際を見誤り、フェンリルを失っている)。
時流を見極める目や、「たましい」の力に対する取り扱いを見ると、今後の骸者陣営の復権においてファントムの働きには期待して良いのかもしれない。