ゴーイング・メリー号のクラバウターマンとは要するに、鉄巨人「エメト」と同様の存在だったのでは。
※以下、第1119話『エメト』までのネタバレ注意
【クラバウターマン】
ご存じの通り、メリー号にはクラバウターマンと呼ばれる船の化身、精霊が宿っていた。
その存在はメリー号としてアイスバーグや麦わらの一味にテレパシーを送ったり、木槌を持った分身を生み出して船を実際に修繕したりしている。
ワンピースという作品の中でもとりわけ神秘的で、不可思議な存在だ。
だが、ここに一つ矛盾がある。
FILM REDの副音声の中で尾田先生は「悪魔の実以外で不思議な出来事は起こさないようにしている」という趣旨の話をはっきり語っていた。
つまり、メリー号のクラバウターマンは「正体不明の神秘的な存在」などではないのだ。
では、一体クラバウターマンとは何なのだろうか。
【古代文明の遺物】
まず考えられるのが、メリー号の生みの親であるメリー(執事)が何らかの能力者という可能性だ。
しかし、この線は極めて薄いと言っていいだろう。
能力者として船にクラバウターマンの機能を与えているなら、麦わらの一味に説明があってしかるべきだし、ファンブックやビブルカード等のどこかでメリー(執事)が能力者だったと解説されていないのがおかしい。
クラバウターマンは悪魔の実の能力以外の、しかもメリー(執事)自身も把握していない力で発生したと考えるのが自然だろう。
悪魔の実以外、即ち「不思議ではない」力であのような現象を引き起こせるとしたら一つしかない。
無論、古代文明の超科学である。
【意思の力】
ここでもう一つ副音声から引用したいのが、トット・ムジカについて言及した際の尾田先生の言葉だ。
トット・ムジカが人の負の感情から発生した存在という設定について尾田先生は「原作でも似たような設定を出そうとしていたから丁度良かった」という趣旨のことを話していた。
その設定こそが、たかたかさんの仰るように、ベガパンクでも到達できなかった古代エネルギーの正体だと考えられる。
ベガパンクの言うエネルギーは原子力とか電力とかの力ではなく、「気」の話をしてる? 元気玉の話に聞こえたけど。200年前にマリージョアを襲った鉄の巨人は誰かの「気」をエネルギーにして動いていたって事なの? #今週のワンピ
— たかたか (@takachanOP) December 5, 2022
悪魔の実の不思議な力が人々の思念によって生み出されたものなら、ベガパンクが夢見ている無限のエネルギーも人々の気(思念)なんじゃないのかな。#今週のワンピ
— たかたか (@takachanOP) December 12, 2022
実際、鉄の巨人は明らかに「ニカの意思」に反応して動き出している。
古代文明の科学力は、人の意思をエネルギーに転換する術を編み出していたわけだ。
そして、トット・ムジカとの類似性がある、という尾田先生の話を考えると、鉄の巨人ことエメトの「人格」は、人々の意思が集まって生み出されたものと思われる。
クラバウターマンもまた、エメトと同様の存在なのではないだろうか。
【一味の意思】
つまり、クラバウターマンとは、船乗りたちの意思をエネルギーとして蓄積し、船に疑似的な人格と、自己修復機能を発生させる古代文明の発明品ということになる。
ゴーイング・メリー号にはその古代遺物が取り付けられており、麦わらの一味と旅する中で意思エネルギーを溜めたメリー号はクラバウターマンを発生させたのである。
白ひげ海賊団の船、モビー・ディック号が沈没する際、メリー号のような「声」を発しなかったことからネット上では「何十年も一緒に航海していたのにメリー号より大切にされていなかったのか」と揶揄する者もいたが、上記の仮説が事実ならばこれにも説明がつく。
モビー・ディック号には単純に、クラバウターマンを生み出す機構が搭載されていなかっただけなのだ。
メリー号は焼失する間際、今までの航海の「記憶」を一味の上に降らせた。
くまがニキュニキュの実で己から押し出した記憶と似たこれこそが、メリー号に蓄積され続けていた「想いの力」なのだろう。
ベガパンクにもう少し時間があれば、くまの「記憶」の研究から、古代エネルギーを再現できていたのかもしれない。
【〇〇・D・メリー】
さて、というわけで表題の件。
そのような古代文明の遺物をメリーが所有していたのだとすると、おそらく彼はジョイボーイと協力関係にあったDの一族の末裔だろう。
ベガパンクは配信最後の「メッセージ」の中で、Dの一族が先祖代々伝えてきたモノによって人生を振り回された人物がいることを示唆していたが、メリーの一族は古代文明の残滓をこれまで守り続けていたとすれば筋は通る(ちなみに、ロジャーが麦わら帽子を被っていたのは、ゴール家にジョイボーイと麦わら帽子にまつわる何らかの伝承が残されていたからだと考えている)。
しかし、800年経ち、とうとうその伝統も風化してしまった今、末裔であるメリーは代々守り続けていた古代遺物を、詳細もよく解らぬまま自身が設計した船に組み込んでしまった。
その結果、ゴーイング・メリー号には古代エネルギーで動く、失われた科学の結晶が宿ったのである。
……と、書いてて思ったんだが、メリーの生家に伝えられていたというよりは、その主家であるカヤの一族に伝わっていた、の方がありそう。
メリーは船のデザインこそしたが、実際に船を製造させたのは金を持っているカヤの父親だと考えた方が自然よね。
メリーの幼少期からの夢を叶えるのと同時に、詳細不明ながら一族の蔵に眠っていた古代遺物を組み込んだのだとすれば。
Dの一族なのはメリーではなく、カヤの方かもしれない。
うん、Dの一族だと判明して読者が喜ぶのはメリーじゃなくてカヤだよね、どう考えても。
メリーがDの一族とか、何を血迷ったことを言ってたんだ私は。
というわけで、この記事の正式なタイトルは、『カヤ、古代文明の機器を受け継いだDの一族説』です。
ありがとうございました。