ベガパンクの悪いところが出てた配信だった。
※以下、第1117話『も』までのネタバレ注意
【ベガパンクの言う「彼」】
ベガパンクが善悪を論じないと語った「彼」。
前後の文脈から考えて、これは「世界を海に沈めようとしている者」のことだから、「彼」とは当然イム様を指していると解釈していたのだが、どうにもそれだとしっくり来なかった。
「花の部屋」で蝶や花と戯れる姿や、リリィ女王に対する異常な執着を見ると、イム様が男だとはとても思えなかったからだ(正確には、男だとしたらあの執着はワンピのラスボス級キャラとしては気持ち悪すぎる)。
しかし、実際にはこの「彼」はジョイボーイを指していたということが、第1116話『葛藤』にて判明した。
なんのことはない。
ベガパンクは、世界を海に沈めたのが「ジョイボーイの一団」だと勘違いしていたのである。
【Dr.ベガパンクの誤解】
ベガパンクの研究したポーネグリフや書物の中には、「世界を海に沈めたのは連合国」とは書かれていなかったのだろう。
そもそも「世界が海に沈んだのは人為的なものである」ことすら言及されておらず、ベガパンク自身の分析から導き出した結論のようだ。
あるいは、それらの情報はどのポーネグリフにも記されておらず、ラフテルに辿り着いて初めて知れることなのかもしれない。
いずれにせよ、独自の研究によって「空白の100年」の間に何者かが古代兵器を使用して海面を上昇させた事実を導き出したベガパンクだったが、それが誰なのかまでは分からなかった。
が、そこで彼は思い違いをしてしまったのである。
【濡れ衣】
ベガパンクは古代兵器を使って海面上昇を引き起こしたのは、ジョイボーイが率いる一団だと断定してしまった。
当然と言えば当然の思考だ。
彼の言によると、900年前に超高度な文明を持っていたのはジョイボーイの祖国だけで、そして、「巨大な王国」と連合国は対立関係にあった。
ならば、古代兵器などという超兵器を製造できたのもジョイボーイの祖国だけ。
そうなると当然、古代兵器を使用したのもかの国ということになる。
更に、ポーネグリフの研究の中で、ジョイボーイが古代兵器を隠匿したこともベガパンクは知ってしまっていた。
即ち、今回ルルシア王国を消滅させ、海面を上昇させたのは「ジョイボーイの遺志を継ぐ誰か」に違いない。
ベガパンクはそう推論したのだろう。
しかし、これが大間違いであった。
実際には、海面上昇をもたらす古代兵器の一つは既に、世界政府が手にしているのだから。
【大誤報】
要するに、空白の100年のどこかで連合国は古代兵器(おそらくはウラヌス)を入手していたのだ。
それを使って世界を海に沈め、今また更なる海面上昇を目論んでいる。
そもそも、古代兵器を製造したのも、ジョイボーイの祖国である「巨大な王国」ではなく、もっと遥か昔の文明である可能性が高い。
「巨大な王国」はそもそも最初からずっとウラヌスを所有していなかったのかもしれない(ポセイドンにしても「巨大な王国」が所有していたわけではないし)。
もっとも、我々読者は世界政府が古代兵器と思しき物体でルルシア王国を消したのを見ているが、誰がルルシアを消した下手人かを知らないベガパンクからすれば、そこまで思考を巡らせるのは困難だったろう。
「曲がりなりにも800年間の長きに渡り、世界の秩序を守ってきた世界政府が、まさか今更になって世界を海に沈めるはずなどない」という思い込みもあったはずだ。
この件でベガパンクを責めるのは酷な話ではある。
とはいえ、もし彼がオハラの考古学者たちのように他の人物と共同で研究を行っていれば、誰かは「連合国(世界政府)が犯人である可能性」を指摘してくれたかもしれない。
人々で議論し合えば、思い込みを解き、真実を導き出すのは難しくなかったはずだ。
ここに、ベガパンクの傲りが見える。
彼は「これ以上話せば憶測になってしまう」と、あたかも事実だけを語ったように言っていたが、知らず知らずのうちに憶測、しかも誤った憶測を世界に向けて発表してしまったのだ。
これにより、世界中の多くの人々は、「世界を海に沈めようとしているのは世界政府の敵」だと真逆の認識をしてしまった。
まさに、世紀の大誤報と言えよう。
【ヨークと読者の誤認】
そもそも、ルルシア王国が消えたのも、政府に空白の100年の研究が漏れたのも、ベガパンク自身が作った己の分身の裏切りが原因である。
「自分には下卑た欲望など無い」と己を過大評価した結果、ヨークという邪欲の化身を生み出してしまった。
そのヨークもまた、一つの誤解をしていた。
マザーフレイムを盗み出したのは自分で、それが政府の手に渡ったことも当然把握している彼女は、「配信のベガパンクもそれを知っている」と誤認してしまったわけだ。
同じくそれらの事実を知っている読者に近い形の誤解である。
それにより、配信でベガパンク(ステラ)は世界政府を告発していると思い込み、配信電伝虫は「世界政府のガサ入れがある前提で隠されているはず」だと考えてしまった。
しかし、実際には配信動画を撮影している時のステラは、マザーフレイムを盗んだのがヨークなのも、ルルシア王国を消したのが世界政府なのも、全く想像すらしていなかったのだ。
このスレ違いがなければ、配信電伝虫はもっと早期に発見されていたことだろう。
尾田先生のミスリードに、ヨークも我々読者もまんまとやられてしまったわけである。
【今後の世界の動き】
結果的にベガパンクは、『世界を沈めたのはジョイボーイの一団で、その意志を継ぐ誰かが今もまだ沈めようとしてる』という実態と真逆のとんでもないデマを世界中にバラ撒いたことになる。
今後の世界は当面の間、存在しない「世界を海に沈めようと画策するジョイボーイの後継者たち」を捜す羽目になるだろう。
後世のベガパンクの伝記では、「人類の科学を大きく復興させたが、晩年は大量破壊兵器の材料を再び世に生み出し、誤った学説を大々的に発表して世界を混乱に陥れた」とでも書かれそうだ。
世界政府にとっては不幸中の幸いといったところか。
ベガパンクの勘違いがなければ、沈められるのを恐れた人々が政府に反旗を翻したはずだからだ。
もっとも、SWORDの面々はどうやら、世界を沈めようとしているのが政府のようだと気が付いたようである。
「ルルシア王国を消したのはどうやら世界政府」だという情報を、彼らは入手していたのだろう。
SWORD以外の海兵や政府関係者の中にも、気付いた人間は多いはずだ。
彼らが果たしてどう行動することになるか。
【世界を沈める大義】
ただし、センゴク元帥のこれまでの言動や、今回のサカズキ元帥の反応を見る限り、彼らは「世界政府が地表を沈めようとしている」事実を知っていたと思われる。
『世界を沈めようとしたのはジョイボーイの一団』という嘘を教えられている可能性も考えたが、それならば赤犬はルルシア王国を消滅させた謎の存在のことをもっと危惧しているはずだ。
また、センゴク元帥も政府が島を消滅させる力を持ってるのを知っていた。
どの階層までかは分からないが、海軍上層部は政府がいずれ世界を沈めようとしているのを知った上で、それでも彼らに従っているのだ。
つまり、世界を沈めることには、正義を掲げる海兵が賛同するような「大義」があることになる。
また、世界の真実を知っている白ひげや光月おでんも、誰かがラフテルに辿り着いた際には、世界を二分する大戦が起きると語っていた。
彼らは、「政府が世界を沈めようとしている真相」や、「ジョイボーイの一団側の思想」が暴かれた後も、世界の半分は世界政府の側につくと想定している。
それだけの『正当性』が、世界政府には存在するわけである。
SWORDや他の海兵が真実を知ったからといって、政府から離反するとは限らない。
【鉄の巨人】
ベガパンクは鉄の巨人の動力(900年前の最新エネルギー)は再現できていないので、鉄の巨人が守ってるとは言っても、それが動き出したのはベガパンクにも想定外の完全に偶然の出来事なんだよね。
そもそも、「配信動画撮影時点のステラの認識」を理解したヨークが、なぜ隠し場所を鉄の巨人だと言い当てたのかも現時点では分かっていないが。
なんでなんだろうね。
全く思いつかないや。