結論から言うと、「スパンダムの身分が低かった」から。
※以下、ネタバレ注意
10年前、スパンダムは五老星に謁見し、トムさんの持つ設計図から古代兵器を復活させる計画を具申している。
通常、五老星への謁見は権力の間にて行われているが、スパンダムの謁見のみ、なぜかこの噴水広場で行われ、そしてこの広場は二度と登場しなかった。
これを私は単に「尾田先生がおしゃれな場所にいる五老星を描きたかったから」としか思っていなかったのだが、最近明かされた設定に照らし合わせれば、明確な理由が導き出せることに気が付いた。
五老星の姿は少将以上の海兵しか見る事が許されていない。
これはおそらく、徒に怪物のような姿を見られることで悪評が広がり、権威に傷がつくのを防ぐための措置だろう。
故に、拝謁が厳しく制限されるのは、今回のように五老星が能力を使って変身するような場面だけかと考えていたのだが、常日頃から制度化されているのかもしれない。
その場合、「少将以上」というのは海軍における基準であり、他機関においてはそれぞれ個別に五老星に謁見できる地位が定められているはずだ。
そう考えると、スパンダムがなぜ五老星と噴水広場で謁見していたかが見えてくる。
即ち、彼の当時の役職である「CP5主官」とは本来、五老星に会えるような身分ではなかったのである。
大河ドラマ『麒麟がくる』の中で、正親町天皇が殿上人ではない明智光秀と、「たまたま移動中に庭先にいた光秀とすれ違った」という形をとってお言葉を賜った。
五老星とスパンダムもそれと同じだったのだ。
本来ならばCP5主官風情が五老星から勅命を受けることなどなく、正式な謁見の間である「権力の間」に足を踏み入れることも許されない。
その中で、古代兵器という重要案件と父親のコネを使い、「パンゲア城の散策中に偶然対岸にいた」という名目で五老星から非公式に直接任務を授かることに成功したのだろう。
思えば、ゲルニカも五老星からの「勅命」に驚いていた。
CP0の特級エージェントですら、五老星から直接任務を受ける機会など、ほとんど無いのである。
ましてや、CP5に過ぎないスパンダムが非公式とはいえ勅命を受けたのは、異例中の異例と考えるべきであろう。
五老星がいた場所に椅子が一脚しかなかったのも、噴水広場が本来は単なる憩いの場であり、五老星が一堂に会することなどないからだったと推察できる。
その一脚をナス寿郎聖が堂々と専有しているのは、他の五老星から一目置かれている人物だからなのか、ただワガママなだけなのかはわからないが。