昔は決まった呼び名は特に無かったのかもね。
【聖地の者】
第1103話でサターン聖が同胞たる天竜人のことを「聖地の者」という妙な言い回しをしていたことに初見から引っ掛かっていたのだが、そこからピンと来るものがあり、五老星が登場する場面を全て読み返してみた。
その結果、これまで五老星が天竜人を指す台詞を述べていたことは一度も無いことが判明した。
五老星たちは普段から天竜人を指す際には「聖地の者」という呼び名を使っているのだろう。
【新語】
ロズワード聖など一般の天竜人は自分たちのことを「天竜人」と呼んでいるにも関わらず、なぜ五老星はかように回りくどい呼び方をしているのか?
理由はおそらく単純で、即ち、「五老星たちが産まれた時代にはまだ『天竜人』という言葉が存在しなかった」からだと考えられる。
五老星が不老手術によって数百年前から生きていることは半ば明らかだが、彼らが生まれ育った数百年前にはまだ聖地マリージョアの住人は「天竜人」とは呼ばれていなかったわけだ。
近年になって作られた新語であるため、馴染みの無いその呼び名を五老星たちは今でも使用していないのである。
【聖地の者の神格化】
五老星の服装や言葉遣い、髪型を見ても明らかなように、彼らは一般の天竜人のような奇抜な格好や言動はせず、下界の住民と大差はない。
それは彼らの時代の「聖地の者」が、現代のような尊大な振る舞いをしていなかったからだろう。
しかし、五老星が生まれてから数百年が経つ中で、徐々に聖地の者の神格化が進んでいった。
五老星も信奉する最初の20人、「創造主」の末裔であるという意識から、自らを特別な存在だと考える風潮が強まったのだろう。
その結果、「聖地の者」は下々の人間と自分達を区別する為に、特殊な服装、特殊な髪型、特殊な喋り方、そして「天竜人」という尊称を開発した。
果ては、下々と同じ空気を吸わないために、下界でマスクを使用するような有様だ。
(マスクや服装については、数百年前まで聖地マリージョアでは防護服が必要だったことが捻じ曲がって伝えられたと感がられる。詳しくは下記記事を参照)
【権力の腐敗】
数百年前まではさほど自分達を特別な存在だとは考えていなかった「聖地の者」も、子々孫々と権力に溺れていくことで己を神格化させていく。
マスクの件に気付いたときも面白いなと思ったものだが、「時と共に腐敗する権力」をこうやって呼び名一つでさらっと表現できる尾田先生の手腕には舌を巻くばかりだ。
五老星に「天竜人」という言葉を言わせないよう、注意して描いてきたのが伝わってきた。
FILM REDで普通にナス寿聖が「例え天竜人が関わっていようと」と言ってるのを見た時は内心で(あ……)とは思っただろうなあ。
……まあ、さっき急いで読み返したので見落とした部分が無いとは断言できない。
どっかで原作でも五老星が「天竜人」と言ってるシーンがあったらごめんな。