多分、世界政府(連合国)側が自分達で汚染してる。
※以下、ネタバレ注意
【マスク姿の天竜人】
第1067話で描かれた、200年前に巨大ロボットが聖地マリージョアを襲撃した際の場面。
私はロボットそのものよりもむしろ、逃げ惑うマリージョアの住民達の姿が気になった。
第1083話でも同様に天竜人達が逃げ惑う構図が描かれており、見比べてみれば一目瞭然なのだが、現代とは違い、200年前の天竜人たちは聖地でマスクを着けている。
天竜人がマスクを着用する理由は「下界で下々民と同じ空気を吸わない為」だと説明されており、故に神々の地であるマリージョアでは天竜人達はノーマスクなわけだが、そうなると、200年前の天竜人は聖地の大気が汚れていると見做していたことになる。
【マリージョアは汚染されていた】
だが、神々である自身らが住まう聖地を、天竜人達が意味も無く汚れているとする理由は無い。
つまり、聖地マリージョアの大気は、少なくとも200年前までは実際に汚染されていたのだろう。
それもおそらくは、800年前に世界政府が設立された時には既に。
【戦争の爪痕】
なぜ、800年前からマリージョアが汚染されていたと考えるのか?
それは私が、世界政府(の前身たる連合国)によって滅ぼされた「ある巨大な王国」は、現在の聖地マリージョアに存在したと予想しているからだ。
ベガパンクの技術すら超える超科学文明を有していた「巨大な王国」が、100年に渡る大戦争の末に連合国に滅ぼされた。
その敗因はレッドライン上にある本国に、一種の化学兵器を使用されたことにあるとしたらどうだろう。
「巨大な王国」とは本国の土地の広さを表すのではなく、現在の世界政府のように多くの国々を統合する連邦国家であったことを指しているのではないか。
【神の国と「巨大な王国」】
レッドラインの上にはかつて、ルナーリア族が「神の国」を築いていたと語られている。
普通に考えれば、現在レッドラインに本拠地を持つ世界政府が彼らを滅ぼし、追い出したということになる。
その場合、「神の国」こそが「ある巨大な王国」である可能性は高い。
だが、私にはどうもそうは思えない。
世界政府は「巨大な王国」の情報を徹底的に消しており、「巨大な王国」の存在は世界中の優秀な考古学者達がポーネグリフや古文書を研究することでようやく探り出したものだ。
一方で、ルナーリア族について世界政府は公に手配をかけており、その存在を秘匿しようという意思は見られない。
また、白ひげは「神の国」がマリージョアの『ずっと昔』に存在したと語っている。
800年前に「最初の20人」が移り住み、聖地マリージョアと号する直前まで存在した国を指しているとすれば、この表現は不自然だ。
「神の国」がレッドライン上にあったのは、空白の100年より更に昔のことであり、800年前まではその「神の国」を滅ぼした別の国家が存在したと考えるべきであろう。
ルナーリア族がレッドライン上に「神の国」を建国
↓
何らかの勢力が「神に国」を滅ぼし、ルナーリア族をレッドラインから追いやる
↓
その勢力が新たな国家をレッドライン上に建国
↓
800年前、連合国がその国を滅ぼし、世界政府を樹立
(なお、「神の国」が滅んだあとのルナーリア族の生き残りはゴッドバレーに移住したという倩さんの説に一票)
このような歴史が展開されたのだと考えられる。
「神の国」を滅ぼし、800年前までレッドライン上に築かれていた国家こそが、空白の100年で連合国と戦争を繰り広げた「巨大な王国」というわけだ。
クローバー博士は王国の名を口にする前に撃たれたが、彼が口にしようとしていたその国名こそ、『マリージョア』だったのではないかと予想している。
【覇権国家の証明】
こう考えると、「最初の20人」がなぜわざわざ聖地マリージョアに移住したかも見えてくるだろう。
「神の国」も「巨大な王国」も、世界政府と同じくその時代における覇権国家の地位にあったと推測できる。
レッドラインにこそ、覇権国家を覇権国家たらしめる巨大な力が眠っているのだろう。
「巨大な王国」との戦争に勝利するため、自らが使用した化学兵器で汚染されていてもなお、「最初の20人」はその土地へ移り住む必要があった。
マリージョアにある何かが、今後の世界秩序を自分達が握る上で絶対に必要だったからだ。
【マスク文化の変遷】
上記のことが正しければ、天竜人は少なくとも600年に渡ってマスクを着けた生活を強いられ続けたことになる。
コロナ禍でのたった数年の間だけでも、マスクが習慣化した者も多いだろう。
それを天竜人は数百年間、先祖代々行ってきた。
これはもはや伝統であり、常識である。
聖地マリージョアの大気が清浄化した後も、長い年月によって刻み込まれたその習俗は残り続ける。
頭部全体を覆うマスクは、もはや天竜人を象徴する服装となっていただろう。
マスクを着ける「必要性」が無くなったとして、今更その伝統を容易に捨てられるはずがない。
だから、作った。マスクを着ける新たな「必要性」を。
「下界の汚れた空気を吸わないため」などという一見無意味な天竜人のマスクは、かつては確かな根拠があった『常識』と、数百年かけて肥大化した選民思想が融合することによって生まれた、歪んだ文化だったのである。
不老手術によって数百年前から生きていると思しき五老星が、下界に降りた際にマスクを着けていないのも当然だ。
おそらく彼らはマリージョアが汚染されていた時代を経験しており、下界ではなく聖地にいる時にマスクを使ってきた。
マスクが習慣化してはいただろうが、「下界に赴く時にマスクを着ける」などという、不合理な新しい文化には、到底同調などできなかったのだろう。