なんか今回の回想で、「そうかも……」と思い始めたのと、Twitterで何回も同じことを聞かれるのが嫌になってきたので、今のところの考えをまとめておきます。
※以下、最新話は勿論、『ファントム・ルージュ』という稀に見るクソ映画を見る苦痛を対価に得られた0巻のネタバレも当然あります。
え? 0巻を持っていない?
そんな……。
0巻を持っているかどうかで、今回の旅団の回想の読み味も大きく変わってくるのに……なんて可哀想……。
ひとえにてめェが生まれたのが遅いせいだが。
【0巻の反応】
最初に言っておくと、この説はクラピカの過去編が読み切りで描かれた直後から結構な数の読者の間で囁かれており、私が自分で思いついたわけではない。
逆に、今回の回想を読むまでは、否定的だったくらいだ。
むしろ善性がとめどなく溢れている私は、それを読んで一気に幻影旅団を許せない正義心が極限まで高まった為、「お宝を奪う為ならこういう残虐な殺しもするだろ。これだから軽薄な旅団ファン共の妄想癖は……」と思っていたし、もっと言うと、その頃は冨樫先生のことを舐め腐っていたので、「どうせ、読者を嫌な気分にさせたいが為だけの話であって、これまでとの整合性とか考えてないよアイツは」とすら考えていた。
【旅団の犯行ではない?】
とはいえ確かに、当時から違和感はあった。
ヨークシン編などで見られた旅団の殺しは「雑」「無計画」そのものであり、怒り・悲しみによって最も美しさを増す緋の眼の価値を最大限に高める為に、大勢を、しかも女子供を中心に地獄の苦しみを与えながら惨殺したクルタ族虐殺の犯行とはイメージがズレる。
そもそも、幻影旅団の面々にとって「金」はさほど重要ではない。
幻影旅団としての盗みは団長の指示のもと行われているし、その団長は盗んだ品を一通り愛でたら全て売り払うような、コレクターとは無縁の人間だ。
もし仮に、最高品質の緋の眼を手に入れたかったのだとしても、一人の眼だけ奪えば良い話であり、クルタ族全員をわざわざ手間をかけて惨殺する必要は全く無い。
思えば、これは明らかに、「クルタ族の眼を最高品質で多数売って金を儲けたい」という思考の人間による犯行なのである。
【流星街議会の犯行説】
旅団の犯行を否定するもう一つの材料となるのが、クルタ族の惨殺死体の側に残されていた『我々は何者も拒まない。だから我々から何も奪うな』という御馴染みの流星街メッセージだ。
言うまでもなく、幻影旅団は人を殺したとしても、いちいちこんなメッセージなど残していない。
むしろ、フィンクスを筆頭に、流星街の議会のやり方を馬鹿にしているくらいである。
そもそも、メンバーを限定している幻影旅団にとって『何者も拒まない』という思想とは無縁だ。
故に、クルタ族を虐殺したのは、幻影旅団ではなく、流星街の長老達の意を受けた者たちではないか、という予想も当時からあった。
今回の回想で、クラピカ等に外の世界のことを教えたシーラが、流星街の出身だったことが明かされたことで、『流星街犯行説』を改めて提起する者も見かける。
だが、これは旅団以上に可能性は低い。
ヨークシン編で語られたように、流星街の報復は、「関係者だけ」を「爆殺という相手を苦しめない殺害方法」で行うものである。
例えば仮の話として、クルタ族の長老達が、クラピカ達に外の世界のことを教えた厄介者のシーラを害したのだとしよう。
しかし、もしそうだとしても、流星街が報復するのはあくまでもシーラへの加害に関わった者達だけであり、子供も含めたクルタ族全員を、しかも散々苦しめて殺害するなど、あり得ない。
しかも、彼らは無実の同胞が刑務所に入れられた際にも、それが冤罪と証明されるまでの3年間は、一切行動しなかった。
流星街の議会は、同胞が傷つけられたら自動的に報復を行うわけではなく、あくまでも他国の法を尊重し、その上で同胞が理不尽な目に遭わされたと立証された時だけ報復を決行するのだ。
その報復も、対象1人につき、流星街の住人1人を犠牲にする方法で、である。
流星街の議会は、報復の決断に対して極めて抑制的であり、例え報復の為だとしても、他者の命を奪う行為を非常に重く見ていることがよく解るだろう。
【旅団はクルタ族と戦っている】
さて、「クルタ族虐殺の犯人は旅団ではない」という説を唱える度に、毎回突っ込まれるのが、ウボォーのこの台詞である。
確かに、この台詞を読む限り、幻影旅団はクルタ族を殺害していなければおかしい。
が、ただ、それだけのことでしかない。
要するに、ウボォーを含む幻影旅団は確かにクルタ族と殺し合いをしたのだろうが、それはあくまでもクルタ族の一部との話であり、クルタ族数百人を皆殺しにしたのは、幻影旅団ではないと解釈可能なのだ。
ウボォーはクラピカのことを、「自分が戦ったクルタ族の戦士達の生き残り」と誤解した。そう考えて何も不自然はない。
『団長がいたく気に入ってた』というのも、改めて読み直すと、緋の眼のことではなく、旅団と戦ったクルタ族自身のことだと解釈する方が、クロロの性格を考えれば自然な台詞回しである。
クロロは緋の眼を気に入っていたわけではなく、クルタ族の性向と、彼らとの殺し合いをこそ楽しんでいたのではなかろうか。
【虐殺の真犯人とは?】
クルタ族虐殺を行ったのは、幻影旅団でも流星街でもない。
では、一体誰だったのか?
私はおそらく、「その辺の普通の犯罪組織」だと考えている。
犯行現場には『我々は何者も拒まない。だから我々から何も奪うな』という流星街メッセージが残されていた。しかし、流星街の犯行ではない。
となればこれは、偽物のメッセージということになる。
流星街は幻影旅団がまだ幼い頃から既にこのメッセージを残した報復活動を行っており、それが世間に知れ渡っていることが第395話で明かされている。
つまり、メッセージを偽装することは誰にでも可能だったわけだ。
しかし、実際に世間で犯人とされているのは、流星街ではなく幻影旅団である。
これは、彼らがクルタ族の一部を殺しているからだろう。
真犯人達はそれに便乗したのではなかろうか。
【事件の経緯】
上記を踏まえて、クルタ族虐殺の経緯をまとめると、こんなところではないか。
クラピカが旅立つ
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幻影旅団とクルタ族の一部との間で何らかの理由で殺し合いが勃発。
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とある犯罪組織が、クルタ族の一部と幻影旅団が殺し合った事と、クルタ族の里の場所を掴み、「旅団に捜査の目を向けながら、緋の眼を手に入れる」ことを思いつく。
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犯罪組織が里を急襲し、精鋭を旅団との揉め事で失っているクルタ族は敗北。
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最高品質の緋の眼を出来るだけ多く得る為、全てのクルタ族が嬲り殺しにされる。
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当時、流星街と幻影旅団はまだ一体とマフィアにも思われていた為、『我々は何者も拒まない。だから我々から何も奪うな』という偽装メッセージを下手人達が残す。
【後付け?】
クルタ族の虐殺が幻影旅団の仕業ではなかったとして、当然そんなのはヨークシン編当時には無かった設定だろうと今の今まで思っていたのだが、こうやって整合性が取れるのだと改めて書き連ねてみると、普通に当時からそういう設定だった気もしてきた。
確かに、クロロの団長としての言動は演じたものであって素の姿は違うとか、「初めは、ただ欲しかった」だとか、思わせぶりな描写はいくつもあったし、ヨークシン編当時のハンタの作風は明らかにテンポを重視していたから、いずれ描くかどうかは未定でも、そういう裏設定を最初から用意していたのだとして不思議ではないかもしれない。