ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

うるかちゃんENDになる事は最初から決まっていた事と他ヒロインの恋の意味【ぼく勉 第147話】

 成長。成長です。

 それこそが、彼らが歩んできたこの物語の意味。

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【2人の物語】

 『ぼくたちは勉強はできない』というラブコメディが、うるかちゃんエンドになることは確実である。

 そして、第142話第147話の感想でも書いたように、それは連載初期から既に決まっていたと考えられる。

 

 成幸がうるかちゃんに惚れたのは、彼女が水泳に打ち込む姿を見たことがきっかけだった事が今週語られた。 

 その感情を「憧れ」としか自覚できていなかっただけで、本当は中学1年の夏の時点で彼女に落ちていたわけだ。

 

 そんな成幸のうるかちゃんに対する想いが、最初に描かれたのはいつのことだっただろうか?

 驚くなかれ。

 1巻の第4話、即ち、うるかちゃん初登場時のエピソードでのことなのである。

 

 中学1年生の時、まだうるかちゃんの方は彼に恋してはいない時から、成幸は彼女に思い焦がれていた

 その根幹となる感情は、1巻の時点で既に描写されている。

 

 お分かりだろう。

 物語開始当初には既に成幸はうるかちゃんを好きだったのみならず、そうしてうるかちゃんENDになる事を、筒井先生は当初から予定していたわけだ。

 

 ぼく勉という作品は、成幸くんが自身の恋に自覚していき、うるかちゃんが想いを伝える勇気を持つための、2人の恋物語だったのである。

 

【レース】

 上記を読んで、読者の中にはこう思われた方々もいるだろう。

 「では、何故うるかちゃんをサブヒロインのように登場させた? 何故、文乃と理珠が二枚看板のように描いたのだ。おかしいではないか」、と。

 

 この答えはずばり、「ヒロインレースを面白くするため」

 それだけだと考えて良いだろう。

 

 ぼく勉がニセコイを参考にしていることはまず間違いない。

 かの作品の場合、当初からメインヒロインとして登場した千棘と最終的にも結ばれて終わった。

 「誰が選ばれるか分からない」というレース的な盛り上がりには欠けていたのである。

 

 筒井先生は逆の手を打った。

 メインヒロインとして想定していたうるかちゃんを敢えて第三ヒロインとして登場させ、読者のミスリードを誘ったわけだ。

 これにより、作中においては最初から勝負の決まっている言わば出来レースの恋模様でも、読者達は「誰が選ばれるか分からない」レースであるかのように錯覚した

 

 実際、Twitter上でアンケートを取ったところ、この期に及んでまだうるかちゃん以外のヒロインの勝利を信じている読者がかなりの割り合いで存在している。

 無論、私のように<主流>が見える者達にとっては、うるかENDとなることは最初から自明であったのだが、<うるかルート>という<主流>を見ることが出来なかった多くの凡夫は、仕掛けられた「傍流」にまんまと乗ってしまった。

 

 筒井先生の目論見は見事に成功したと言っていいだろう。

 

【意味と価値】

 さて、中にはこのように言う読者もいた。

 「始まる前からうるかちゃんエンドで決まっていたのなら、文乃や理珠の恋は一体なんだったのか」、と。

 

 これも答えは簡単だ。

 彼女らの恋は、彼女らの成長の為にあったのだ。

 

 「成長」

 これこそが文乃と理珠のキーワードだ。

 

 彼女達は成幸と出会ったことで成長することができた。

 学力もさることながら、父親と和解し、人との接し方を覚えて親友を持った。

 

 失恋もまたその一つなのである。

 確かに、「文乃ルート」「理珠ルート」などという流れは紛い物の「傍流」に過ぎなかった。

 しかしながら、「傍流」に溺れる読者達が見ていた彼女達の恋は間違いなく「本物」であり、<うるかルート>という<主流>の中にあったのだ。

 

 ぼく勉は確かに成幸とうるかの恋物語ではあったが、同時に他のヒロイン達の成長物語でもあったわけだ。

 

 彼女達の恋は叶わなかった。

 おそらくは告白すらできずに身を引くことになるだろう。

 だが、それは決して無意味などではない。

 

 直近では五等分の花嫁も、レースを装いながら物語の最初の時点で既に勝者が決まっているラブコメだった。

 <四葉ルート>という<主流>を当初から見ることができたのは、私のようなごく一部の者だけで、多くの読者は他の姉妹ルートという傍流へとその身を落とした。

neoamakusa.hatenablog.com

 だが、作品内での彼女達の歩みが無価値だったなどと誰に言えるだろう。

 

 例え物語の最初から勝ち目は無かったとしても、成幸やフータローと過ごした日々、彼らに抱いた想い、それらから得た成長の糧は「意味」と「価値」を持った「本物」だったのだ。

 

 失恋もまた「本物」なのである。

 彼女達は敗北者ではあっても、失恋を糧に成長するはずだ。

 何と崇高で、なんと素晴らしい。

 

 彼女達の成長の証として、最終話では文乃・理珠・桐須先生やあしゅみぃ先輩が夫ないし彼氏と共に登場してくれれば言う事はない。

 

 成幸への想いを胸に、彼女達はきっと真実の相手を見つけるだろうと、私は確信している。