こうなると、シャンクスの姓が気になるところ。
【ルフィはジョイボーイではない】
第968話『おでんの帰還』にて明かされた人魚姫と出会う運命の『王』。
人魚姫との関係と、「いつか〝ジョイボーイ〟が現れる日までに」というおでん公の台詞から考えると、ジョイボーイは個人名ではなく、王の称号なのだろう。
当然のことながらこの『王』とは、物語の主人公であり、海賊王を目指しているルフィの事を指していると捉えた読者が多いかもしれない。
だが、私は現代のジョイボーイはルフィとは別の人物だと考えている。
海王類達は「2人の王がまた出会う日を」クラジ達と同じく自分達も「ずーっと待っていた」と語っている。
もし、ルフィがジョイボーイならば、彼らが待ち侘びた「2人の王がまた出会う日」は魚人島編にて既に訪れていることになる。
しかしながら、2人の王の再会を目の当たりにしたはずの海王類達は、その再会については何の喜びも表していない。
それどころか、ルフィを単なる一介の人間だとしか見ていなかった。
現代のジョイボーイは他にいて、2人の王の出会いはまだ実現していないのである。
無論、海王類達には誰がジョイボーイかを見分ける力が無いと考えることも出来るが、ジョイボーイの誕生を予見している以上、その可能性は低いだろう。
【ワンピースを見つける者】
「いや、ロジャー海賊団の会話からすると、ジョイボーイこそがワンピースを見つけるのだから、ルフィがジョイボーイのはずだ」と思われた読者もいるかもしれない。
しかし、当該の場面をよく見て頂くと、「そして、おれ達を超えていく」というロジャーの台詞から「おれ達は……早すぎたんだ」という誰かの呟きまでの間には、時間経過を表す技法(名前は知らない)が使われていることが分かる。
つまり、「〝ひとつなぎの大秘宝〟を見つける」者の話題が出たのは、ロジャーが海王類の声について語っている場面から、いくらか時間が経ってからなのである。
また、しらほし姫が人魚姫の一族の子孫である以上、現代のジョイボーイも空白の100年に存在したかつてのジョイボーイの末裔である可能性が高いことはロジャーにも分かっていただろう。
にも関わらず、彼はワンピースを見つける者として自らの息子のことを挙げている。
ジョイボーイは何らかの形で『おれ達(ロジャー海賊団のことか、あるいは現在生きる人間全てのことか)』を超えるが、ワンピースを見つける者がジョイボーイとは限らないわけだ。
【20年後】
海王類が囁いていた「王」の誕生は、ロジャー海賊団のラフテル到達から9年後=現在から16年前のことだ。
しかし、おでん公は「20年以上先の未来」を待つとしていた。
おトキ様が家臣を20年先に飛ばしたのも、それを知った上でのことだろう。
おでん公の処刑から20年後の現在、何かが起こると予見しているからこその言動である。
では、おでん公やおトキ様が待とうとした出来事とは、一体何なのだろうか?
例えば、海王類達が囁いていた「産まれてくるのに、いち十コ(10年)」「大きくなるのに、いち十5コ(15年)」という台詞。
私はこれを『(あの時点から)10年後に生まれ、(あの時点から)15年後に大きくなる』と捉えた(しらほし姫は6歳の頃には既にポセイドンの力を行使しているからだ)が、仮に『10年後に生まれ、そこから更に15年経った25年後に大きくなる』と解釈すれば、おでん公達は人魚姫の成長を待ったとも考えられる。
また、上記の海王類の台詞は人魚姫だけではなく、ジョイボーイの誕生の事も同時に表している(=2人の王は同い年)とも解釈できるから、2人の王の成長を待ったのかもしれない。
とはいえ、だ。
海王類達の台詞を「25年後」と考えたとしても、それは現在から1年前のことなのだ。
では、何故おトキ様は1年前ではなく今年にモモの助達を飛ばしたのか?
オロチ様とカイドウの手によりワノ国がこれから蹂躙されることは彼女にも分かっていただろう。
本当なら一刻も早く救援を呼びたかったはずだ。
海王類達の言葉に従ったのであれば、無駄に先延ばしになどせず、19年後丁度にモモの助達を飛ばすだろう。
トキトキの実は細かい制御はできず、5年、10年単位でしか飛ばせない?
なるほど、その可能性を否定はできない。
しかしながら、こう考えることも出来るはずだ。
おトキ様が待ったのは、海王類達の言葉とはまた別の予言が理由だと。
【ジョイボーイの誕生はいつ?】
そもそも、人魚姫(や現代のジョイボーイ)が15歳になったからと言って、2人の王の出会いや、世界を動かす出来事が発生するのがその年だとは限らないのだ。
もっと後のことかもしれないし、もっと早いかもしれない。
海王類達の声についてロジャーが「『きっと』真実」と推測の混じった表現に留めている以上、この件に関してはラフテルにも、海底で聞いた以上の情報は無かったのだろう。
ならば、おトキ様の立場からすれば、もっと早い時期にモモの助達を送り込んでも良いではないかと思うのが人情だ。
時間が経てば経つほどに、ワノ国も民達も疲弊していくのだから。
それでもなお、おトキ様が20年後の未来、今年にモモの助達を送ることに拘ったのなら、何か強い根拠があったはずだ。
海王類の声以外に根拠となり得るものがあるとすれば、ラフテルに何らかの予言が遺されていた可能性だろう。
私はそれこそが「ジョイボーイの誕生年」なのではないかと睨んでいる。
ジョイボーイの誕生と、彼の持つ何らかの特殊な力によって世界が動く。
そうラフテルに記されていたのであれば、おトキ様が民草の犠牲に目を瞑って20年待った事にも頷ける。
世界が大きく動き出せば、鎖国されたワノ国もまたその波から無事ではいられない。
オロチ様とカイドウの支配も揺らぎ、付け入る隙が生まれる望みも出てくる。
【3D2Y】
「今年に何かが発生するという予言がラフテルに遺されていた」、この予想には他にも根拠がある。
頂上戦争の後、レイリーが麦わらの一味の集合を2年後の現在に指定したことである。
おトキ様の強い意向でモモの助と家臣たちが飛ばされた年、レイリーが麦わらの一味の集合年として指定した年。
これらがピタリと一致しているのだ。
到底、単なる偶然では片づけられまい。
【ジョイボーイ、シャンクスの息子説】
さて、ようやくの表題の件。
おトキ様とレイリーが待ち続けた現在。
この年に生まれた赤子と言われ、ONE PIECEファンの頭に真っ先に浮かぶ人物は1人しかいないはずだ。
言うまでも無く、マキノさんの子供である。
意味深長にも扉絵にて突如存在を明かされた赤ん坊。
以前からシャンクスの子供ではないかと噂されていたこの子が物語の最重要人物だったとしても、何ら驚きはない。
かつて存在したジョイボーイとはおそらく、800年前に連合国(現在の世界政府の前身)に滅ぼされた巨大な王国の王であろう。
シャンクスはその王族の末裔なのか、それはもちろんまだ分からないが、そう考えれば彼がラフテルから帰ったロジャーの言葉に涙した理由についても、また違った想像ができるかもしれない。
赤髪のシャンクスもまた、何らかの使命を背負った人間だったのではないか、と。