そういや、冥冥さんの術式もメカ丸と同じく監視に使えるよね。
夏油は複数の監視者を使っていたわけか。何とも隙の無いことである。
【自殺行為】
冥冥さんは、地下鉄構内にいる呪霊が、真人である可能性が高いと認識していた。
当然、彼が領域展開を修得しており、七海さんが殺されかけたことも知っているだろう。
にも関わらず、僅か3人だけの冥冥班単独での突入を決行した。
これは最早自殺行為に等しい。
そもそも、同様に真人がいる可能性が高いとの報告を受けているであろう上層部の判断からして奇妙奇天烈である。
渋谷の騒動では敵が特級呪霊の組織であると警戒し、「被害を最小限に抑える為に」五条を単独で行かせているのだ。
なのに、同一組織の特級呪霊である真人相手には、何の警戒心も無く3人だけを放り込んだ。
支離滅裂な指揮と言わざるを得ない。
無論、この矛盾した命令は、指揮権を握る上層部の内通者=夜蛾によって下されたものだろう。
しかしながら、その奇妙な指示を現場の冥冥が唯々諾々と受け入れているのはあまりにも不自然だ。
この不自然さを解消する答えは一つしかない。
そう、冥冥は既に夜蛾、ないしニセ夏油によって買収され、彼らに協力しているのである。
【不合理】
虎杖は、周囲に守る者がいない方が強い五条のような特殊な術師ではない。
当然のことながら、仲間と連携して戦った方が有利である。
にも関わらず、冥冥は禪院班、七海班、日下部班のどこにも協力を仰ごうとはしなかった。
例えばこれが虎杖1人だけが危険に晒される状況なのであればまだ解る。
「虎杖の命も、非術師の命もどうでもいい」と冥冥さんが考えているだけ、とも解釈できるからだ。
しかし、今回は弟の憂憂や自分自身の命が懸かっている。本来、必死に生存率を上げようとするはずだろう。
確かに、虎杖は(宿儺の牽制がある為)真人の領域展開を抑止する事ができるだろうが、だからといって確実に真人に勝てる保証などどこにもない。
虎杖も強くなったとはいえ、真人もまた成長途中の呪霊であることは、七海さんから協会員に周知されているはずだ。
真人相手に有利に立ち回れる虎杖を軸にしつつ、他の術師と連携して祓うのが最善である。
虎杖が真人を取り逃がすか、返り討ちに遭うかすれば、地下4階に降りた冥冥らの身が危うくなる。
いや、それどころか、そもそも真人がいるのが本当に虎杖が向かった地下2階という確証も無い(「〝おはし〟だよー」と一般人を追い込んでいる様子からして、実際に地下4階にいるのだろう)。
仮に真人が地下2階にいたとしても、他の特級呪霊が地下4階にいないという根拠も無い。
冥冥と憂憂は死地に飛び込んだに等しい。
だが、その死地から生還する確率を少しでも上げる選択肢はあった。
渋谷に待機している他の1級術師達に援軍を要請することだ。
現状、彼らは「五条が取りこぼす『かも』しれない呪霊や呪詛師を待ち構えている」状況にある。
緊急性は明らかに明治神宮前駅の方が高い。少なくとも一班はこちらに呼び寄せられるはずだ。
しかし、冥冥はそれをしなかった。
一刻の猶予も無かったからか? 非術師達を1秒でも早く救う為、援軍を要請する時間を惜しんで自分と弟の命を賭けたのか?
果たして我々の知る彼女は、そのように利他的で、かつ無謀な人物だっただろうか?
【目的】
冥冥が買収されているとなれば、明治神宮前駅の事件が待機組の中で冥冥班だけに通知されたことも、虎杖を地下2階へと誘導することも、事前に計画されていたと考えられる。
とはいえ、その目的は未だ判然としないなあ。
バッタさん程度の敵と戦ったところで虎杖が宿儺に助けを求めるとは考え難いから、バッタさんは単なる時間稼ぎなのだろう。
だとするなら、冥冥と憂憂が地下4階で真人と合流し、バッタさんが稼いだ時間で何らかの工作をするつもりなのかもしれない。
一般人を使って宿儺の縛りを強めるのが目的なのか、はたまたそれ以外の狙いがあるのか……。
【信頼関係】
冥冥さんの性格から考えれば、ニセ夏油や夜蛾との関係は金だけの繋がりだろう。
五条から受け取った1千万はあくまでも「虎杖たちを1級へと推薦する」条件だろうから、それが達成されている以上、彼女からすれば別に五条に義理立てする必要もない。
楽巌寺学長の依頼を受けた時のように、金を積んだ者に靡くだけである。
となれば、夜蛾達の立場からすると、できれば特級呪霊の内通者ではなく、「上層部の意思として虎杖を抹殺しようとしてる」という形で依頼する方が都合が良いけど……さすがに、高専襲撃の呪霊も絡んだ事件でそれを通すのは無理があるか。
真人がいると考えられる地下4階にも烏を飛ばしているのに、冥冥さんが彼を『発見できなかった』ことから考えても、特級呪霊との協力関係を事前に知らされていたのは間違いなさそうだ。
だとすると、メカ丸の時のように夜蛾自身は表には出ず、ニセ夏油を通して協力を依頼したと考えた方が自然だろう。
冥冥は上層部の誰が内通者なのかは知らず、呪霊と手を組むニセ夏油からの依頼として仕事を引き受けた可能性が高い。
呪術師の命も、非術師の命も一顧だにしない。
「金の味方」という彼女の言葉に嘘は無さそうだ。悪い意味で。
【バッタの呪霊】
何気に人間を食べる呪霊って珍しい。
特に上級呪霊となると。
彼はあからさまな捨て駒だよね。
自然系呪霊+真人の間にはそれなりに仲間意識みたいなものがあるようだけど、下位呪霊は別にどうなってもいいくらいの感覚なのだろうか。
真人はともかく漏瑚さんなんかは呪霊という存在に拘りがあると思うのだが、「最後に地上に立っているのが呪霊であれば、別に自分は死んでもいい」という思想だから、他の呪霊も全て「自分と同様に」捨て駒扱いなのかもしれない。
蝗害への呪いにしてはあんまり強く無さそう……。
いや、意思疎通できるくらいだから、0巻時点で16体しか確認されていない特級の一体なのだろうし、強いことは強いんだろうけど。
と思っていたのだが、↓のタイツマンさんのツイートで納得。
バッタの呪い、蝗害が歴史的に猛威を振るったアフリカや中国、ヨーロッパだとめちゃくちゃ強大な呪霊で、逆に土地が狭く群生相が発生しにくいため、北海道なんかで僅かに確認されたくらいの歴史しかない本邦だとそんなに強くないのかもしれないな
— タイツマン (@TAICHUMAN) December 2, 2019
まあ、それを言ったら、津波や地震で畏れられてきた海の呪霊や漏瑚さんに比べて、森の呪いである花御さんは格が落ちることになりそうだけど。
あんまり森って呪われてないよね、人間に。
もしかすると、自然系特級呪霊で花御さんが最弱だったんだろうか。
体力は漏瑚よりあるらしいけど。
【その他】
・「僕は両方できるけどね」という五条のセリフは、「強いし、結界も張れる」という意味だと解釈して良いのかな。
・強い事が結界を張れる必須条件(で、更に強くても結界が張れるとは限らない)みたいだから、「両方できる」は言い回しとしてちょっとおかしい気はするけど。
・「オマエらは、どいつもこいつも」「人間舐めるのも大概にしろよ」
・虎杖悠仁、夜蛾学長の作った呪骸説を考えると皮肉としか言いようがない台詞。