ま、要するに今後は夜蛾学長がメカ丸の代わりになるんだろうという話。
まず最初に確認しておきたいのは、与幸吉の操るメカ丸は「呪骸」ではないという事である。
呪骸というのはパンダやニセ夏油や虎杖、その他の夜蛾のぬいぐるみのように、呪いを内に宿して自律行動が可能な物を指し、遠隔操作のみで動かすメカ丸は呪骸では無い。
単なる傀儡だ。
おそらく、与幸吉には呪骸を作り出す能力は無かったのだろう。
そして、呪骸を作成できる夜蛾学長は、「傀儡呪術学の第一人者」であり、この事から単に呪骸を作るのみならず、与幸吉のような傀儡操術も使えると考えられる。
つまり、この事態の黒幕である夜蛾学長もまた、小型傀儡を使って盗聴や盗撮を行う事が可能なのだ。
無論、天与呪縛があった幸吉に比べれば操作範囲こそ狭まるだろうが、それでも監視活動を継続できるのは大きい。
だからこそ(偽)夏油は「できれば渋谷でも協力して欲しかった」と言いつつ、与幸吉を強く説得しようとはしなかったわけだ。
夜蛾とニセ夏油にしろ特級呪霊にしろ、その目的は(現在判っている限りでは)あくまでも宿儺であり、主な監視対象地域は関東圏になるはずだから、メカ丸のように全国を監視できる必要はない。
にも関わらずメカ丸をメインの監視者として使っていたのは、可能な限り夜蛾が怪しまれぬようにする為だろう。
夜蛾の監視者としての役割は予備ないし補完的なものだったと考えられる。
実際、五条先生と歌姫先生は(どういう思考経路でなのかはよく分かわらないが)「上層部側の内通者は直接現場の情報を収集できない人間」と思い込んでいるので、まさに狙い通りになっていると言える。
……そういえばメカ丸の回想を見る限り、彼は少年院で宿儺が領域展開を使っているところも監視していたようだが、少なくともあの時点の宿儺では小型傀儡の存在を察知はできないのね。
傀儡に込められた呪力が小さ過ぎて分からないのかな。
六眼を持つ五条相手だとどうなんだろう。
呪力が皆無の禪院甚爾の気配すら察知しているから難しそうだが、そうなると五条のいる場所は監視できていないことになる。
彼を頻繁に出張に行かせているのは、それが一つの理由かもしれない。