いよいよ中野姉妹の実父が登場しそう。
【来てるぜ】
最初、一体誰の事を言っているのか全く分からなかったのだが、「同窓会」という比喩によって彼らと同年代の人物であると推測されるのと、上杉父が五月に対して「何もなかったか?」と気遣っている様子から、1人の候補が思い浮かんだ。
そう、中野姉妹の実父である。
私の記憶が正しければ、姉妹の実父について作中でまともに描写されたことはなかったはず。
しかし、一度だけ(たぶん)、その人物像の片鱗が語られたことはある。
それは林間学校での一花と五月の会話でのこと。
フータローと姉妹との不純異性交遊を懸念する五月に対して、一花はこう窘めた。
「フータロー君はお父さんとは違うよ」
おそらく読者の多くは、これを「マルオ」と呼ばれる中野姉妹の継父(ないし未成年後見人)を指していると考えただろう。
事実、中野姉妹が「お父さん」と呼ぶ時は、常にマルオについての話題だった。
だが、マルオはその押しつけの教育方針や突き放すような態度を姉妹から非難されてはいても、女性関係の乱れがあるような人物ではない。
フータローと姉妹が不適切な関係となることを心配する五月への説得として持ち出されたのは不自然だ。
だとすれば、ここで比較対象となった「お父さん」とは、マルオの事ではなく、実父を指していると考えた方が自然である。
つまり、中野姉妹の実父は浮気癖のある女性にだらしない男であり、それが原因で零奈さんと離婚する事になったのであろう。
不倫を繰り返して零奈さんや娘たちを悲しませ、離婚後はろくに養育費も払わずに元妻や子を貧困へ追い込んだ。
そして、零奈さんの亡き後はマルオに娘たちを丸投げしているのである。
そんな男とも言えぬクズ親が町に『来ている』。
上杉父はそれをマルオに警告しに訪れ、五月と遭遇していないかを気に掛けたのだろう。
「同窓会」という皮肉めいた言い回しをしている事を考えると、彼ら3人は元々同じ学校の同級生だったのかもしれない。
フータローがとうとう決断を下すとの宣言を行い、物語も佳境に突入する中、ラスボスとして立ち塞がるのが姉妹の実父となりそうだ。
【レース】
と、まあそれはともかく。
いよいよこの作品のヒロインレースもゴールが近いわけである。
もはや一花が勝利ヒロインとなることは決まったようなものなので、我々一花派にとってはほとんど出来レースを眺めるような、高みの見物といった心境であるが、他ヒロイン派の読者からすると気が気ではないだろう。
この期に及んでもまだ一花の勝利を受け入れることが出来ず、一縷の望みに縋っている人間もいることだろうし、勝敗が決した時の彼らの衝撃は決して小さくはあるまい。
ざっくり言えば五等分の花嫁という作品の全読者のうち、5分の4の敗北者たちの嘆きと怨嗟の声がネット上に溢れだすのだ。
それを想像するだけで、私の小さな胸は張り裂けそうになってしまう。
【演技】
四葉さんほど演技に向いている人間もいないだろう。
まあもっとも、彼女の場合、自分で自分を欺く演技を日常的に行っているだけなので、他人の書いた台本通りの演技ができるかどうかはまた別の話かもしれないが。
五月や一花に本当の自分を解放するように促されてなお、四葉さんはフータローへの想いや、姉妹に対する歪んだ情念を内に秘めたままなので、この舞台で演じる役を通して、自身の本音を披露する展開なども考えられそうだ。