妄想してみてくださいと言われたので妄想してみる。
==== 皆さんもうご存知のように、83巻のSBSにてドフィことドフラミンゴと、ヴァイオレットことヴィオラ王女が肉体関係にあったことが明かされた。
もちろんはっきりと書かれているわけではないが、文脈的にそう考えて差し支えないだろう。
さて、ではその関係とは一体どういうものであったのだろうか。
肉体関係があったという情報だけであれば、ヴィオラは国を奪ったドフラミンゴを憎んでいるのだから、リク王やレベッカを持ち出して、ドフラミンゴが関係を迫ったと考えるのが自然だ。
しかし、尾田先生はSBSにて「深い裏設定がある」「かなり大人な物語」「まさに情熱の国ドレスローザ」と語っている。
単にドフラミンゴが一方的にヴィオラを手籠めにしたのであれば、さほど「深み」のある話ではない。
また、主に天竜人関係でワンピースでは男に性的に搾取される女性の存在は既に何度も匂わされているのだから、今回だけ「かなり大人」と考えて、本編で描写するのを自重したというのも不自然だ。
加えて、ドフラミンゴはドレスローザ出身ではないのに、彼の一方通行の想いを表して「まさに情熱の国ドレスローザ」と言うはずもない。
以上のことから、この関係はドフラミンゴが無理強いしただけではなく、ヴィオラの方もドフラミンゴを愛していたと解釈すべきであろう。
彼女がドフラミンゴを憎んでいたことは、揺ぎ無き事実だ。
しかしながら、ヴィオラ王女は国を奪われるまでは(当然ながら)箱入り娘だったわけである。
そんな19歳の小娘が、自信に満ち溢れ、圧倒的なまでのリーダーシップを持ち、なおかつ彼女がこれまで触れたこともない悪の臭いを身にまとった年上のイケメンに出会ってしまったのだ。
これはもう、惚れるなという方が無理な話ではないか?
ドレスローザを支配するやいなや、まるで父の政権を否定するかのように、武器商人として戦禍をバラまき、貧しかった国に富みを齎し、民を豊かにしていったドフラミンゴに対し、果たしてヴィオラは侮蔑の念だけを抱き続けられただろうか?
さらには、ドフラミンゴがヴィオラに言った「情熱的」という台詞。
この場面ではお互いに「かつて呼び合っていた名前」を決別のための皮肉として敢えて使っていると考えられるが、だとすれば、この「情熱的」という表現も、ヴィオラがドフラミンゴの前で実際に見せていた振る舞いを形容している可能性が高い。
平たく言えば、ドフラミンゴとヴィオラの夜の営みは、非常に情熱的なものであったのではないか。
ヴィオラさんにとってみれば、国を奪われ、親の仇も同然の憎いはずの男を愛してしまっているのだ。当然、自己嫌悪に苛まれたことだろう。
そして、それを忘れようとするかのように、いっそ彼女は情熱的にドフラミンゴに抱かれたがったというわけだ。
めちゃくちゃエロい。
もっとも、ヴィオラと対峙した際のドフラミンゴには、ロシナンテやローに裏切られたときと比べて、あまり彼女に対する執着は感じられない。
おそらく、彼にとってヴィオラとの関係は、それほど思い入れのあるものではなかったのだろう。
逆に、嫁入り前の王女であったヴィオラは、ドフラミンゴが最初で最後の男である可能性すら考えられる。
彼女の方が、ドフラミンゴへの想いは強かったかもしれない。
そう考えると、ドフラミンゴがルフィに倒された際の反応も、また違った意味を帯びてくる。
切ない表情で涙を流し、空を見上げる彼女の心にあったのは、国を救われた喜びだけだったのか?
倒れたルフィを抱えるレベッカとは対照的に、ドフラミンゴが突き落とされた街の方へ視線を向けるヴィオラは何を思っていたのか?
妄想は膨らむ。
これに関連した話として、モネのことをいま一度考えたい。
彼女は妹であるシュガーと共に、「大変不幸な環境」からドフラミンゴに救い出されたという。
これまでのワンピースの世界観を考えても、彼女はおそらく娼婦として強制的に働かされていた蓋然性は高い。
そんな境遇から救ってくれた男に対して、彼女が「忠義」以外の感情を抱いていたと考えるのは難しくないだろう。
しかし、ドフラミンゴの部下に対する対応を見る限り、彼はどん底からファミリーに加わった者を家族として遇する傾向が見受けられる。
おそらく、モネのこともベビー5と同じく、妹のように思って手は出していないのではないだろうか。
その場合、ドフラミンゴと男女の関係にあったヴィオラ王女を、モネは一体どういう気持ちで見ていたのか。
きっと表面上では、憎んでいるはずの男に抱かれているヴィオラを見下し、嘲笑っていたことだろう。
だが、内心では、若様から女として扱われているヴィオラに狂おしい程に嫉妬していたのだと容易に想像がつく。
そんなモネの心情を、ヴィオラも察していたに違いあるまい。
モネからの羨望の眼差しを受けることで、自分が女としてドフラミンゴに扱われていることに、優越感を感じてしまったとしても、これは女として自然な感情と言うべきだ。
そして、そんな感情を抱いてしまっていることから、さらなる自己嫌悪に陥り、何もかもを忘れるためにより一層情熱的にドフィに抱かれるヴァイオレット……。
そんな薄い本を私は見たい。